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むかしむかしあるところにひとりぼっちの悪魔がいました。
人々は言います。あの悪魔は大きな口で人間を食うのだ。黒い瞳で魂を吸うのだ。長い指で悪い魔法を使って気を狂わせるのだ、と。
悪魔はそんなこと、したことがありませんでした。
ただあまりにうつくしかった。
人々にとってはそれが恐怖だったのです。
美しいなんて自覚もなく悪い事など何もしていないのに恐れられ忌み嫌われた悪魔は、鬱蒼とした森の奥のお城にひとりで暮らしていました。
せっかくの大きなお城には誰も訪ねて来ません。広い敷地に生えている木の実を食べ、湧き水を飲み、ただ生きているだけでした。
なんのために生まれてきたのか、なんのために生きているのか。いつまで生きていなければならないのか。なにもわからないけれど、悪魔は、自分を殺してしまうのは嫌でした。
恐れられていようと嫌われていようと、いま生きているのには意味がある。そう思っていたのです。それが素敵なものだったとしても、つまらないものだったとしても、自分で知りたかったのです。
悪魔は晴れた日の空が好きでした。
空の高くを鳥が飛び、風が揺らす木々の葉からは木漏れ日が差し込み、明るくまぶしい空を見上げるのが好きでした。
その日もとてもよく晴れた日で、悪魔は森の中を歩いていました。
お城の東には誰も来ない真っ暗な森があり、入り組んだ木の幹の隙間を掻き分けて進むと開けた土地に色とりどりの花が広がっています。
きっとここは世界で悪魔だけが知っている素敵な場所です。本当は誰かに教えてあげたいけれど、悪魔にはそんな相手はいません。
足元に気を付けながら花畑の真ん中まで進み、しゃがんで空を見上げると自分がとてもちっぽけな生き物のように感じられます。悪魔はそれが好きでした。
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7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、コメントありがとうございます！幸せな気持ちになってもらえてよかった…！こういうのどうなんだろうとか、個人的には好きな世界観だけどこれまでのを読んでくれている人には刺さるのかどうかとかちょっと悩んだりしましたｗこちらこそありがとうですよ！ (2020年7月13日 1時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - こんばんは。恐れられる程の美貌でありながら無垢な心を持つ悪魔の可愛らしさ！悪魔だけれど天使のようなその笑顔に男は心が温かくなり、その温かい眼差しで悪魔は幸せを感じて…と素敵な無限ループを想像しつつ眠れる私もまた幸せです。ありがとうございました。 (2020年7月12日 2時) (レス) id: 276045d76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：7oh
| 作成日時：2020年7月11日 19時
