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木製の窓枠に手を掛け、外気を室内に送るべく全開にした。天気が良い。
日本で暮らしている部屋よりもコンパクトな住居にはピアノは置いていない。いつか何かの取材では“孤高の天才ピアニストが唯一まっさらな自分でいられる場所”として取り上げられたけど別にそんな大それた事じゃなく。
間取りも景観もドンピシャ気に入って、もうここにする！ってとこで防音の面からピアノは置けない事を知り。じゃあ置かなくて良い、弾くときは自分がそれなりの場所に行くから、となっただけの事。
地震のないこの地では古き良き建物が多い。だからそもそも防音完備なんて部屋はよほどでなければ無い。防寒の面で窓ガラスが二重だったりして普通に生活する分の防音には優れているとしても。
極端な話、寝ないと死ぬけどピアノ弾かなくても死にはしない。住むところは極論寝るところだから。つまり、そういう事だ。
久し振りの長期滞在に、さて、何をしようかと楽しい気持ちになってくる。まずは食料の調達だなあ。来る度に行くお気に入りの店を思い浮かべながら軽く支度をして外に出た。
軽い物から買うだろ、と足が向かうのは毎回必ず顔を出すパン屋。オパールグリーンの外壁が可愛らしい店の扉を開けば、店員が一瞬驚きつつ眩しい笑顔で迎えてくれる。
「翔ちゃん！来てたんだ、言ってよ〜」
「さっき来たとこだよ。これと、これ。あとこれ」
ショーウィンドウ越しにいつも買うやつと、目に付いたやつを指定すればカウンター側の彼が相槌を打ちながらトレイに乗せていく。
「とりあえずそれで」
「もうお昼食べた？」
「いや、まだ。相葉くんとこのパンに決めてたから」
「へへ。じゃあこれオススメ！出来立てだよ」
「じゃあそれも」
「まいどあり！」
くるみのパンとブルーベリーのパンとプレッツェル、それから出来立てだというサンドイッチを袋に詰めながら彼は嬉しそうに言う。
「いつまでいる？飲み行こうよ」
「一か月くらいいるから、いつでも行けるよ」
ドイツに部屋を借りてすぐの頃に近所を散歩していた時、たまたま見付けてふらっと入ったパン屋。彼は当時ここで見習いみたいな事をしていた。
何度か訪れているとは言え慣れない土地で偶然出会った日本人。俺にとって彼がそうだったように、彼にとっての俺もそうだった。あれから数年、今や副店長として店を任されているのだという。
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7oh(プロフ) - 白石さん» 白石さん、コメントありがとうございます！ひらがなで数文字の、その破壊力。うれしくてちょっと泣きそうになりました。これからもよろしくどうぞ！！ (2020年5月15日 22時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
白石(プロフ) - だいすきです。 (2020年5月15日 18時) (レス) id: 5afdb1acaf (このIDを非表示/違反報告)
7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、コメントありがとうございます！毎日読み返してくれてるなんて有り難きしあわせの極みです。うれしい。これからも楽しんでもらえるような話を書いていけたら良いなと思うので、何卒！！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - あまりに好きで、今日まで毎日読み返しています(日によって頭から全部だったり所々つまみ食いだったりですが)。好きだと気付いてモヤモヤなSさんの可愛さ！と、苛ついて噛み付くように唇重ねてくるJさんには何度も撃ち抜かれています。はぁー…たまりません…… (2020年2月4日 1時) (レス) id: 72b99ad2a3 (このIDを非表示/違反報告)
7oh(プロフ) - こうべさん» こうべさん、コメントありがとうございます！お友達はそうです、Nさんです。よかった伝わってて。楽しんでもらえてうれしいです！M的にはずっとすきだったひとからそんな事されてますからね。我慢も出来なくなりますよｗこれからもどうぞよしなに！ (2020年2月3日 0時) (レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：7oh
| 作成日時：2020年1月25日 22時
