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弾き心地に関しては正解っちゃー正解なんだけど、あそこにあったピアノがそうだったのもたまたまではあるんだけど。
「変な事聞くけどさ、デュッセルドルフ行ったことある？」
「え…？ある、というか年に何度か行きます。師匠がいるんで。あとは夏のキルメスとかクリスマスマーケットも好きだし」
「だよね。オーバービルカー・マルクトの駅にある古いピアノ、調律してるの君だろ？」
確かめる必要もない項目を一応で確認して、これじゃまるで誘導尋問だとか思いながらの王手。駅名を出した瞬間ドキリとしたであろう表情を見逃さなかったし、何故それを俺が知っているのかと言わんばかりの動揺が空気と彼の声を曇らせた。
「なんで、」
「俺はずっとあのピアノの調律師を探してたんだよ。一、二年の話じゃない、もう五年になるかそれくらい。あっちにも部屋借りてるからさ、行く度に弾いて、朝から晩までピアノの側に張った日もある。でも手掛かりすら掴めなかった」
驚いた様子で口を覆う手が、震えていた。何だこいつヤベー奴だと思われてるのかもしれないけど、それでもどうしても俺は伝えなければならない。こいつを口説き落とさなければならない。
「それまでに弾いたピアノと全然違ったんだ。個体の話じゃなく調律の問題だってのは、すぐにわかった。わかったんだよ、このピアノは愛を知ってんだって」
こんなに必死に仕事絡みで誰かにお願いするのは初めてだ。恥を忍んで明け透けに、全てを話す事でしか訴えかけられないほど。答えは待たない。まだ俺のターン。
「本当にずっと捜してた。こないだまでは一か月ドイツにいたんだよ、でも会えなかった。それなのにまさか日本で出会えるなんて、て喜びの感情諸々込み込みでどうしても調律をお願いしたい」
ここまで言い切ったところで何も言葉が返ってこないのが少し不安で、マジで気持ち悪いと思われてんじゃねーかとか怯んで、水の入ったグラスに手を伸ばした。
「五年前からって本当に？」
「ああ。それこそクリスマスマーケットの時期だったよ、初めて弾いたのは」
彼が好きだと言ったイベントの一つを上げながら、毎年その時期に訪れていたから俺も同じような時期にメンテナンスされたてのピアノに触れていたんだという事を噛み締める。
完全なるニアミス、神様の悪戯か？なんて考えているところに運ばれてくる酒とつまみ。途切れた会話の合間も彼は、信じられないといった顔をしていた。
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7oh(プロフ) - 白石さん» 白石さん、コメントありがとうございます！ひらがなで数文字の、その破壊力。うれしくてちょっと泣きそうになりました。これからもよろしくどうぞ！！ (2020年5月15日 22時) (
レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
白石(プロフ) - だいすきです。 (2020年5月15日 18時) (レス) id: 5afdb1acaf (このIDを非表示/違反報告)
7oh(プロフ) - タルトコさん» タルトコさん、コメントありがとうございます！毎日読み返してくれてるなんて有り難きしあわせの極みです。うれしい。これからも楽しんでもらえるような話を書いていけたら良いなと思うので、何卒！！ (2020年2月4日 21時) (レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
タルトコ(プロフ) - あまりに好きで、今日まで毎日読み返しています(日によって頭から全部だったり所々つまみ食いだったりですが)。好きだと気付いてモヤモヤなSさんの可愛さ！と、苛ついて噛み付くように唇重ねてくるJさんには何度も撃ち抜かれています。はぁー…たまりません…… (2020年2月4日 1時) (レス) id: 72b99ad2a3 (このIDを非表示/違反報告)
7oh(プロフ) - こうべさん» こうべさん、コメントありがとうございます！お友達はそうです、Nさんです。よかった伝わってて。楽しんでもらえてうれしいです！M的にはずっとすきだったひとからそんな事されてますからね。我慢も出来なくなりますよｗこれからもどうぞよしなに！ (2020年2月3日 0時) (レス) id: 886f4a5b1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：7oh
| 作成日時：2020年1月25日 22時
