From nine to nine.【MS】 (ページ17)

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ひとりぼっちになった家の中、今日は何しようかなあって考えつつふらふら歩く。この体のサイズだと玄関からリビングまで行くのにもなかなかの距離を歩く気分。

ソファの定位置を慣らしたら伸びを一つ。彼が猫のかたちで伸びをするとき、ぐぐぐーっとしたあと尻尾をふわりと揺らすのがすきで。ちょっと真似してみたりする。
彼は無事に職場に着いたかな。俺もまたお客さんとして行きたいなあ。カウンターであの、あれ、銀色のシェイカー？しゃかしゃか振ったりすんの格好良いの。繊細なグラスにカクテルを注ぐ手が震えてんのを、気付かないふりして視界に入れるのが好きだった。
今夜は平日だし忙しくない日だったらいいなあなんて考えながら横たわってぼんやりする。大体いつもそんな感じ。

謎に元気でごろごろする気になれないときはテレビつけて眺めたりもするけど、ひとりだと見てるうちに興味がそれて結局寝ちゃったりすることの方が多かったりして。彼とだったら眠くなんないのに不思議。
このサイズだと、この手っつーか前脚だと本は読めないしゲームも出来ないからテレビ見るか寝るかになっちゃうんだよなあ。

ねむたいな、ねようかな。なんか結局寝てばっかりになってしまう、そういう生き物なのかもしれないけど。このかたちでみる夢は、ひとのかたちをしているときの夢が断然多い。
不思議なもんで、猫のかたちが後発だからか脳に馴染みがないらしい。むしろ感覚が新鮮なんだから頻繁にみそうな気もするのに。

尻尾を体に沿わせて前脚の位置を調整したら、もう睡魔が手招きする。彼の夢がみたいから大きな手で撫でられる心地よさを思い出しながら目を閉じて、うとうと。

とはいえ、ほとんどずっと浅い眠りだから夢なのか何なのかわかんなくなって。いま、こんな生活をしているのが夢なんじゃねーかなとか思ったりする。自分が誰で、何なのか。たまにわかんなくなる。

俺が誰で、何であっても側には彼がいて。だから俺は自分を保っていられる。