2 ページ15
「さて、仕込みますか」
「今日は何作んの？」
「塩昆布の作るのと、メインはねぇ、ロール」
「キャベツ！！！わぉ！！」
彼が言ってる途中で嬉しくなって食い気味に、つーか途中から俺が言っちゃうやつ。外側の大きい葉っぱをロールキャベツにして、内側のやわらかいとこと芯を塩昆布のやつにすんの。俺それ好き。
最近はむしろ塩昆布のやつのためにキャベツを消費してるとこすらあって、その度にホイコーローだったりポトフだったり色々バリエーション豊富に献立回してくれんだけどロールキャベツが一番嬉しい。潤が作んの超うまいの。
「何味にしようかなー」
「くたくたにすんならシチューみたいのがいい」
「好きだねぇ」
彼が気分決まんないときは俺が食べたいの言うこともよくあって、好きなの知ってる彼はいつも嬉しそうにそう言う。それ見て俺も嬉しくなる。
何か色々入れて捏ねた肉を、さっと茹でたキャベツで包んでパスタ刺して固定していくのを眺める。料理うまいのいいなあ。もはやどういう感覚なのか俺にはわからない。理解しがたい、とかではなく単純にわかんない。
でも正直、彼が作るごはんが好きだから俺は出来なくて良いと思ってる。あっためるとか、それくらいが出来れば良いと思ってる。彼が作ってくれたのを一番おいしい状態にする事さえ出来れば。
「いいにおい」
「お腹減っちゃうね」
手元から視線だけをこちらへ寄越してやわらかく笑う表情が愛おしい。同じかたちで隣に立ててたら、不意にキスしたくなるような瞬間。彼の隣に立つ自分の幻を見て胸がきゅう、と音を立てる。
俺がそんな気持ちになってるのを知らない彼は鍋の中身を煮込む片手間に、ざくざく切ったキャベツを保存容器に入れて塩昆布入れて密閉して軽く振る。
「よし」
「ごま油は？」
「食べる時に垂らした方がおいしいんじゃないかなーって思って」
実験、てニッと笑うのが悪戯っこみたい。保存容器を冷蔵庫にしまうのを眺めて、ここぞとばかりに足元に擦り寄った。
「危ないよ。踏んじゃう」
絶対踏まないのに、ふふって笑いながらそんなことを言う。俺はそれが聞きたくて、わざと脛にすりすりする。
「甘えんぼ」
少し鍋の中をつついて、菜箸を置いた彼がしゃがんで。んしょ、と声を出しながら俺を抱っこした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 293人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：7oh
| 作成日時：2019年7月26日 22時
