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そのさん。 ページ3

――……ふわふわする。

ぼーっとした頭で芽衣はなにか、柔らかい液体の中にいるような、心地よい浮遊感を感じていた。

どこか遠くで誰かが自分の名を呼んでいる。

声のする方へ振り返ると、そこは一面真っ暗な闇。

そこに浮かぶ、首の折れた一体のフランス人形が――――。


「きゃあああッ!」

ガバっと悲鳴を上げながら起き上がる。

ハアハア、と乱れた息を整えて、冷や汗に濡れた首筋を右の手のひらでぬぐった。


「夢か……」


そう芽衣は呟いて、時計を見る。

「うそ……七時!?」
「芽衣!いつまで寝てるの!遅刻するわよ!」


芽衣が先ほどとは違う意味で血の気が引くの感じたのと、下の階から母の怒鳴り声がしたのはほぼ同時のことだった。



「やばいやばいやばい〜ッ!お母さんってば、何でもっと早く起こしてくれないの!?」

母がその場にいないことをいいことに不満をこぼしながら、運動靴に足をすべり込ませ つま先で床をトントン、と軽くたたいた。


「行ってきまーす!」

元気な声と同時に玄関から飛び出す芽衣。

庭を出て、家の前を走り抜けようとしたそのとき、不意に誰かの視線を感じた。

思わず立ち止まり、視線を感じた芽衣の家の方へ振り返る。

瞳に映ったそれに、芽衣は思わず戦慄した。

納屋の小さな窓からこちらを凝視するのは、昨夜のフランス人形の姿だったのだ。


「う……そ、なんで」


昨夜見た人形は確かに、入口付近に立つ芽衣をまっすぐ見ていた。

納屋の入口とは真逆の、裏の壁に備え付けられた窓から人形がこちらを覗いているなど、ありえるはずがない。

奇妙なその人形に恐怖を感じた芽衣は、遅刻しそうだったことを思い出し、再びすぐに駆け出した。
 

次の日の朝、芽衣はいつもと同じように家を出た。


昨日の出来事を思い出して背筋が凍る。

恐る恐る振り返り納屋を見る。




そこにあの人形は――――――……ない。


ほっと安堵して芽衣は胸を撫でおろす。

きっと昨日は寝過ごして寝ぼけていたら、中に置いてある何かと見間違えたのだろう、きっとそうだ。

そう自分に言い聞かせて歩き出した。
 


しかし、その日の夕方。

そのよん。→←そのに。



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設定タグ:オリジナル , ホラー   
作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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退屈な日常。(プロフ) - 途中で泣いてしまった...っ(´;ω;`) 文才分けてくださ(( (2014年10月1日 18時) (レス) id: 62c9b4f07d (このIDを非表示/違反報告)
8927(プロフ) - 文章力ヤバイですね!思わず引き込まれてしまいました。最後はハッピーエンド(?)でよかったです! (2014年7月2日 22時) (レス) id: 7fc28f0c24 (このIDを非表示/違反報告)
まーさん(プロフ) - ペンタブでしたかっそうですよねっ、ペンタブなら上手な方ですよ!(笑)イラストのうまさでカバーできてますw (2014年6月10日 22時) (レス) id: ae5c5ba8de (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - いおんさん» 絵がうますぎですっ((((;゚Д゚))))神ですねっっヽ(゚∀。)ノ (2014年6月10日 19時) (レス) id: d2f212b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
妙子(プロフ) - お人形がおばあちゃんで守ってくれてたって終わり方が好きです♪素敵なホラーありがとうございます☆ (2014年6月10日 9時) (レス) id: 30085790ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いおん | 作者ホームページ:ないです  
作成日時:2014年5月28日 22時

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