▼ 別れ道 - 前編 - 大宮 ▼ ページ17
▼Nside▼
春…より、ちょっと前。
だけど春の匂いのする、季節。
新しい土の匂い、どこか擽られているような気分になる春風。
それと、となりにいる僕の恋人。
貴方の脇に抱えているキャンパスと
僕の手と繋がれている綺麗な手を交互に見つめる。
…貴方は、春になれば海の向こうの大きな世界へと旅立っていく。
僕の知らない人や言葉に囲まれながら
あなたは好きなコト―――”夢”を目指して未来へと歩いている。
…だけど僕は…
僕はまだ智のとなりで止まったまま。
周りを見渡せば、みんな…みんな前を見つめていると言うのに。
僕だけ、となりの智を見つめてる。
.
「和…ちゃんと、前見てないと転ぶよ？」
.
優しい智の声に、キュンと胸が痛くなる。
前を見ようとするけれど、となりだけを見つめていたい。
.
「和、どうしたの」
「え…？」
「なんか変だよ…？」
.
…口が自然と硬くなり。
沈黙が続く。そして僕は俯きながら自分の動く足を見つめる。
.
「…和…」
「…？…」
.
優しいけれど、どこか泣きそうな智の声に嫌な予感を覚える。
…智を見上げる。
.
「俺、絵描きになるって言ったじゃん」
「…うん」
.
ふわり、春風が靡く。
智の顔には笑みが広がっていて……僕は途端に切なくなった。
.
「有名な絵描きになって、和とずっと一緒にいるって、約束したよね？」
「…うん」
.
なにが…言いたいの？
不安、という感情が僕の心を真っ黒に染め上げて行くような想い。
.
「…でも和が、俺のせいで未来を見えないと思うなら」
「…っ、や、だっ…！」
.
ずっと、智のとなりにいた。
だから、今からあなたの口から零れる続きの言葉が嫌でも分かってしまう。
…嫌でも、分かってしまうくらい……ずっと…一緒にいた…
.
.
.
「―――和、別れよう」
.
…涙の匂い。
春風に乗って、智のコトバが耳を掠める。
.
「…ヤダっ…。」
.
涙が、溢れる。心の奥から、色んな感情が、波に乗るように流れ出る。
僕はその波に乗って、和の胸を叩く。
強く、弱弱しく握られた拳は僕の胸を打つような音がした。
.
「智は僕の事が…っ、キラ、イ…ッ…？」
.
目を擦って、涙をふく。
目の前の智は、そんな僕を痛々しそうに見つめるだけ。
涙さえ、拭いてくれない。
.
「好きだから、お別れ」
.
.
…春なんて、大嫌い。
歪む景色の中にいる目の前の智を睨み、僕は駆けだした。
.
▼next▼
▼ 別れ道 - 中編 - 大宮 ▼→←▼ リーダーの想い 櫻宮 + 大野 ▼
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜莉沙 - ちょー面白い！！心がふわふわぽかぽかする感じが大好きです(*´ω｀*)1話だけでもすごくまとまってて、読みやすくて本当に、本当にサイコーです！！言葉で表せないぐらい(´ω`)これからも更新頑張って下さい(^^♪ (2012年11月19日 22時) (
レス) id: f29802d8b2 (このIDを非表示/違反報告)
秋田ちゃん - 初コメです！なんか、ほわほわしたすごく可愛い雰囲気の小説ですね。すごく大好きです♪嵐全員出てたやつ、ものすごく癒されました〜！あんなこと、実際起こってたら萌え萌えですよねｗこれからもがんばってください！ (2012年11月19日 21時) (レス) id: 1e8bf7458e (このIDを非表示/違反報告)
悪夢ちゃん - 朱葉さん» はじめまして、コメありがとうございますっ！ 朱葉様の、お言葉に…私が、癒されましたっ///そんな素敵な、お言葉を私がもらっても良いのでしょうか…///朱葉様の、お言葉を胸に、これからも頑張っていきますので♪応援、よろしくおねがしいますっ♪ (2012年11月18日 10時) (レス) id: caf1c29771 (このIDを非表示/違反報告)
朱葉(プロフ) - 初めまして♪どのお話も温かでかわいくて、すごーく癒されましたぁ！ひとつひとつのお話が、びんの中に詰まったｷﾗｷﾗのﾋﾞｰ玉、みたいなそんなｲﾒｰｼﾞで大好きです。これからも楽しみに待ってますね！ (2012年11月18日 2時) (レス) id: e4c7068c73 (このIDを非表示/違反報告)
悪夢ちゃん - 実愛さん» はじめまして、コメントありがとうございますっ！ わぁ、そんな褒めていただけるなんて…（照/// 実愛様、ありがとうございますっ♪ これからもがんばりますので、応援よろしくお願いします！ (2012年11月13日 17時) (レス) id: caf1c29771 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：悪夢ちゃん | 作成日時：2012年11月4日 22時
