5 ページ5
少しさび付いた金属の取っ手をゆっくりとまわす。
薄暗い部屋はどこか寂しく、虚無感を感じさせる。
明かりはあるもののそれはこの部屋を照らすには十分ではないらしい。
その部屋にはすらっとした長身の男が右手に煙草を持ちながら窓のそばに立っていた。
しかしせっかくの大きな窓はカーテンで閉め切られている。
「・・・・これはまた珍しい顔だな。」
足音を立てないように入ってきたつもりでもこの男にはかなわない。
智は小さくため息をつきながらかぶっていたパーカーのフードをとった。
智「・・できれば・・・来たくねえし。こんなとこ」
智の正直な一言に、男は苦笑いを浮かべた。
「・・ふっ ずいぶんひどい言われようだな・・・・・これでもお前の父親なんだが。」
智「・・・残念ながらね。」
久しぶりに再会した親子の会話としては謎が多すぎるが彼らにとってはこれが日常らしい。
「・・・ところで？今日は何のようだ？」
智は本題に入るために視線を下に落とし再度深呼吸をしてから、顔を上げた。
智「腕の龍のことだ。・・・そろそろだと思う。」
そう言って智はパーカーの袖をめくって見せる。
「・・・・・そうか。思ったより早かったかもな・・。で、お前はどうするつもりなんだ」
智「みんなを巻き込むわけにはいかない。俺だけで十分だ」
「なるほどな。まさかお前がそこまで仲間に情を抱くとは思わなかったが。ではさっそく手筈を整えるとする。お前はもう戻るつもりはないんだろ？ここで準備を進めろ。」
智は仲間の顔を思い浮かべ一瞬辛そうな瞳を見せたものの、それは一瞬で消え、ああ。っと小さくつぶやいた。
いつもの温かい琥珀色の瞳は光を失い、冷たい印象さえ感じる表情で自身の腕を見つめる。
腕に刻まれた黒と青の龍はその存在を堂々と示している。
二匹の龍はすでに方にまで上り詰めていたーーーーーーーーーー―――――
智は薄暗い部屋から出ると。扉に背を預けずるずるとしゃがみこんだ。
眉根をギュっと寄せ、瞼に力をいれ閉じる。
先ほどと打って変わってその表情から感情が読み取れる。
智「ごめん。みんな。・・・・・・さよなら・・・・・・・。」
息のような小さな声は、４人に届くことはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Jessica(プロフ) - ruriさん» 嬉しいです.....!!!自分の作品を大好きと言ってもらえて感動しております!頑張ります! (2017年7月23日 18時) (
レス) id: 2917becf37 (このIDを非表示/違反報告)
Jessica(プロフ) - 美唯さん» 再度コメントありがとうございます。読者の皆様を励みに完結を目指します! (2017年7月23日 18時) (レス) id: 2917becf37 (このIDを非表示/違反報告)
ruri(プロフ) - この作品大好きです！更新頑張ってください！ (2017年7月9日 18時) (レス) id: ac8ce3f8bb (このIDを非表示/違反報告)
美唯 - 楽しく読ませてもらってます。続き楽しみにしてます (2017年6月4日 23時) (レス) id: 9da5bd590f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Jessica | 作成日時：2017年6月4日 14時
