#08 ページ10
軽く言ったのかと思いきや
ほら早く、と急かされる。
「僕達、会ってから随分経ちますし。」
「そ、そうでしたっけー?」
かれこれ一年位だろ。知らないけど。
何故かじりじりと近付いてくる金髪。
なんで私はこの金髪にいつも流されるんだろうか。
あ、イケメンだからだ。
要らぬ事を考えていると、すぐ近くに端正なお顔。
どろどろに溶かした砂糖みたいな声。
「呼んでくれないんですか?」
A。
息だけで囁かれる。
何処で覚えてくるんだろ、これ。
顔に熱が集まるのが自分でも分かる。
もう降参だ。
「と…………透、さん。」
「……。」
いや、何か言えよ!
恥ずかしいじゃんかよ!
全く返ってこない声に、彼の方を見ると
頭を抱えていた。
え、何故。
はぁ、と溜め息を吐いて安室さんは私を抱き締める。
「今日はこれで許してあげます。」
「ど、どーも?」
多分、その言葉には二重の意味がある。
だから手の怪我については、もう何も聞いてこないだろう。
ちょっと勝った気分。
離れていく安室さんにドヤ顔を決めてやりたい。
そう思うと同時に軽いリップ音。
「え、」
「もうこんな時間ですし、夕飯食べて行って下さい。」
「あ、はい。」
「……顔真っ赤ですよ。」
ふっ、と笑われて両手を頬に当てる。
前言撤回。完全敗北。
このイケメンの方が一枚上手だ。
113人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ