#01 ページ3
「……今なんと？」
「だから、僕とお付き合いしませんかと……。」
聞き間違いかと思い、問い返すと
聞こえたまんまの答えが返ってきた。
信号が青に変わりアクセルを踏む安室さんを、瞬き多めで見つめる。
え、え、お付き合い？？
頭の中でリピートして、やっと状況を理解する。
「おっ、お付き合いとかそんな！私に安室さんは勿体ないですって！」
「何言ってるんですか。Aさんはとても素敵ですよ。」
顔の前で全力で手を振る私に
安室さんは平然と爆弾を投下してくる。
その言葉に、えっとその…と繰り返している内に
自宅に着いて、車が止まった。
そして安室さんは私を見て口を開く。
「駄目、ですか？」
「うっ……。」
好きな人にそんな上目遣いされて、悶絶しない人が居るのだろうか。
いや、居ないぞ。
少なくとも私は、そのイケメンに頭を抱えている。
かっこいいが過ぎるのだ。
「どんな事があっても、僕が貴方を守ります。だから……」
付き合ってくれませんか。
私の手を取り、真っ直ぐ見つめてくる安室さん。
いやもうほんとに顔が良すぎてずるい。
そんな事考えている間にも
マリンブルーの瞳に捉えられ、返事をしようと言葉を選ぶ。
「あの、実は私、安室さんの事ずっと前から好きで……」
「だから……私で良かったらお付き合いして下さいっ！」
思わずぎゅっと目を瞑り、私の手を捕む安室さんの手を握る。
次に来る声を待っていると
ふんわりと笑う雰囲気と大好きな香りに包まれた。
安室さんの匂いだ。
「あ、安室さん…？」
「すみません。可愛かったのでつい。」
耳元で聞こえる彼の声に肩を上げる。
"つい"で抱き締められちゃうとかこの人怖い。
私の脈を異常に早くさせて殺したいのか。
イケメンってすごい。
「じゃあ、これから宜しくお願いしますね。Aさん。」
「は、はい。」
離れていったイケメンに
送って貰ったお礼を述べて車を出る。
小さくなる白い車に小さく手を振った。
そして夢じゃ無いのかと頬を摘まむ。
「……いひゃい。」
ちゃんと痛かった。
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