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#14 ページ16

目的のお店を前にして、目を見開いた。
同時に財布の中身を頭の中で確認する。

これは1ヶ月マジで節約しなきゃだな。

そうひとりで覚悟していると、くいっと腕を引っ張られた。



「どんなのが好みですか?」


「えぇ。ちょっと分かんないですけど…。」



店内をキョロキョロと見回して、取り合えず良さげそうなのを探してみる。



「これなんてどうですか?ワインレッド!」


「却下です。」


「なんで!?」


「スリットが深すぎですし、それに…赤色なんかよりも白や黒などの方がAさんにはお似合いですよ。」


「はぁ…。」



煮えきらない返事をして、それを戻す。

確かにスリットは入ってるけど、そこまでだし
ワインレッドって個人的に好きなんだけどなぁ。

少し口を尖らせていると、視界の端に白が見えた。



「どうですか?似合うと思うんですが…。」


「なんと言うか、露出が徹底的に無い感じですね。」


「無くていいんですよ。なんならパンツスーツでも良いくらいに。」


「それはちょっと…。」



苦笑を溢しつつ、あれよこれよと物色し
三着に絞った所で試着をしてみる。

白、黒、青。

どれも、ふわふわしたお姫様みたいなタイプだ。
なんだか、透さんの好みが分かった気がするな。

着てみて一頻り悩んだ末、黒のやつにしようと決める。

フイッシュリーフの形に、背中が大きく開いているドレス。
レースが使われていて可愛い。


元の服に着替えて試着室を出ると
透さんが私を見て、ぱちぱちとふたつ瞬いた。



「てっきり、試着した姿を見せてくれるのかと…。」


「明日のお楽しみです。」



悪戯っぽく笑って見せると

楽しみにしてます、なんてふんわり笑い返してくれるから
なんだかほんわかした気持ちになる。

さぁお会計だと、少々その笑顔を歪めながら財布を取り出そうとする、が。

透さんが支払ってくれて。
しかも真っ黒なカードだったから驚いた。

もう、これは。
ポアロのバイトと探偵は副業だと確信しても良いんじゃないだろうか。


じゃあ、本業は?

自分から言わない辺り、隠している気がするから詮索しない方が良いのかな。


ぽつぽつと考えていると名前を呼ばれて、意識を外に戻す。



「Aさん、行きますよ?」


「あぁっ、すみません!それとお会計ありがとうございますっ。」


「いえいえ。」



ちゃっかり荷物まで持ってくれている透さんの、もう片方の手に指を絡める。

きゅっと柔く力を入れてみると、透さんも返してくれて。

今はこのままでいいやって思えた。

話してくれるまで、物分かりの良い女でいようかな。

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作者名:透空 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月10日 13時

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