#10 ページ12
「お姉さん！こんにちはー。」
ある日の昼下がり。
軽快にベルを鳴らして入ってきた、眼鏡の男の子。
その顔を見て、ぱぁっと顔を輝かせる。
「コナン君！久しぶりだね！！」
「ぐえっ。」
お客さんが少ないのを良い事に
ダッシュでコナン君に抱き付いた。
うん。やっぱりこのサイズ感が堪らないね。
「今日、安室さんは？」
「今日は普通におやすみ。」
「へえ。」
私の腕から脱け出して、カウンター席に座る眼鏡君。
質問に答えながら、いつものオレンジジュースを用意する。
「はい。オレンジジュース。」
「ありがとー！」
にこっと笑ってお礼を言ってくれる。
やっぱり癒やし。
軽く談笑していたら、コナンくんは一回キョロキョロとして声を小さくした。
「お姉さんは安室さんの事、どこまで知ってるの？」
「どこまで？」
うーん、と考える。
どこまでって言ったって、まだ0にも辿り着いて無いと最近思い始めたんだよなあ。
「皆が知らない黒子の位置までかな。」
「ズゴッ。」
私の言葉で、コナン君はストローを盛大に鳴らして頬を赤らめた。
この小一、マセてんな。
反応に困って居たので、うそうそと笑ってみせる。
「実はね、何も知らないの。」
「え？」
「私は、ポアロに居る安室さんしか知らないみたい。」
自分で言って、少し眉を下げた。
だからと言って、聞く勇気も無いんだけど、と付け足して
自分用にミルクティーを注ぐ。
そして良い事を思い付いたと、何か考えているコナン君を見る。
「ねぇ、小さな探偵君。」
「なーに？」
「安室さんの事、調べてくれない？」
「……。」
「……冗談だよ。」
あはは、と笑って今来たお客さんの対応をする。
その間に探偵さんは、ご馳走様と出て行った。
あの様子だと、何か知ってるんだろうな。
詮索するのは良くないし、
踏み込もうとするのはらしくない。
でも、知りたいって思うんだよ。
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