死がわかつまで【男主】 (ページ6)

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呆気なく中学最後の部活の時間は過ぎていった。

川のなようにするすると時は流れてゆくのだ。どんなに辛くてもクソみたいなことが起きようとも時は全人類平等に訪れ、そして流れる。

＂時は金なり＂とは良く言ったものだ。

瞬きをする間だけで、一瞬で最後の大会の日になったような気もした。今まで血反吐を吐くような苦労も痛みも辛さも割と味わってきたと思うが、ここまで来るのに早かったのは確かだ。

本当に短かった。たったの三年間。

「もう俺達の中学生のバレーはここで最後なんだね」

「何だよ急に…つーかそういう言い方怖いわ。どうせ高校でもバレー続けるんだろ？絶望的な言い方すんな」

「絶望的？そうでも無いけど。俺なりに希望を込めたつもりだよ？」

俺はへらりと笑うと、早川には頭をかいてため息をついた。そして早川は大会当日もお前はお前だよな、なんて言った。

はは、当たり前じゃん。俺以外に何があるの。

ふとチームメイトの顔を伺ってみると、緊張の色や諦めの色…諸々暗い表情が見えた。

中学最後の大会だし、当然と言えば当然なのか。俺は別段緊張はしていないが、今までの試合とは違う心境なのは何となく自分でもわかっていた。

「折角やるなら勝ちたいよね」

「あれ、お前勝利には貪欲なんじゃねえの。今日は威勢がねえな」

「誰が言ったのそれ。…今日みんないつもよりアップから動き硬いし、勝つってドンと言いづらい」

俺のその言葉を聞いて、ひとりのチームメイトは笑いながら悪態をついた。勿論、嫌味な笑いだ。

「流石ウチの＂お姫サマ＂だよな。自分はいつでも緊張せず万全で居られるもんな？これで負けたら俺らのせいって言われるんじゃね？」

豪快に笑うと、それに釣られて神妙な顔つきをしていたチームメイトも次々と口を開き出した。

「いいよな、最初から才能ある奴はさ」

「どうせここで負けてもアイツは次があるしな」

「はは、負けても姫サマは白鳥沢から声掛けられるだろ」

「俺達とは世界が違うからな」

俺はみんなに命令したことは無いつもりだった。姫気取りなんてしたつもりもなかった。

隣で早川は拳を握りしめて唇を噛んでいた。なんでお前がそんな顔するのって聞きたいけどやめておこう。

きっと彼らは、あいつらは自分達のプレッシャーや緊張から解放される為に俺を利用してるだけ。

_俺はそう言い聞かせて自分を苦しみから解放した。俺もまた、自己暗示を利用して楽な道を歩むのだ。