死がわかつまで【男主】 (ページ3)

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「Aのバレーってなんか…＂無重力＂って感じするよな」

「え？重力あるよ？」

「いや、そういうことじゃなくて比喩だよ比喩…」

体育館。部活仲間の早川とふたりきりのトス練。今日の部活は既に終了していたが、何だか今日は体が疼いて仕方がなかった。

手のひらに馴染み深い、ざらざらとしたボールの感触が伝わる。不快感はなく、むしろ心地良いものに感じる。

この感触こそ、バレーをしていると実感するひと時であった。

無重力。バレー歴も長く、小学校から俺のプレーを見てきている早川が言う言葉なら間違いはないのだろう。

少しの沈黙の後、俺は軽く言葉を零した。

「そんなにふわふわしてるかな、俺のバレー」

「悪い意味で言った訳じゃねえよ？ただ、なんつーんだろうな…」

俺の返したボールを受け取ると、早川はそのままボールを抱いたままうーんと唸った。

「言葉で説明するのは難しいんだけど何かこう…滑らかで止まることがないっていうか…」

早川は歯切れ悪く言葉を出すもしっくりきていないらしく、まだ唸りながら考えていた。

無重力、か……悪い意味ではないことにひとまず安心するも、それはこれからのバレーに良い影響をもたらしてくれるものなのか。

自分のバレーというものをじっくり考えたことも見たこともなかった為、簡単に答えが出るはずもなかった。

今一度、自分のプレーを見直してみたほうが良いのかもしれない。

「上手く言えなくてごめんな。ただ、お前のバレーは見ててすげえ気持ちいいからさ」

「…そうなの？ふふ、嬉しい」

早川は俺の笑顔を見てへらりと笑った。

気持ちのいいものであるのなら、変に深く考え込む必要もない気がしてくる。無重力がこれからどう転がるかは別として、今はとにかく出来るだけ伸ばせるところを伸ばして高めていきたい。

練るのはそれからだ。無重力を生かせるプレーを考えるのは全部そこから。