登校4日目・掴みどころのない人 ページ47
なんで？
さっき彼女には呼ぶなって...
「"その呼び方していいの1人だけ"って言ってなかったでしたっけ？」
無理に離れようと足掻いたらそのままお互いの唇が触れそうになる。
こんな事故ちゅー求めてないから！
僕は抵抗するのを諦めた。
「そうだね...。でも俺はAにはそう呼んで欲しいな。」
愛しいものを見るようなそんな目つきで僕の頬を撫でる先輩。
岩本先輩といい、深澤先輩といい...
なんでこう突然名前呼びするかなぁ！！
狙ってるでしょ！
「どうせ、誰にでも言ってるんでしょ...」
先程先輩たちがしていた会話が思い返される。
きっと彼はこうやって皆を虜にしてきたんだろう。
そう思うと何故だか心がモヤモヤとして、ついムカついてしまう。
何故こんなことになっているのだろう...
そんな僕自身の心境が気に食わなくて頬を膨らませふいっとそっぽを向く。
「そーいうとこ、ほんと可愛いと思うよ。」
「なんなんですか深澤せっ」
「"辰哉くん"でしょ？」
彼の行動や言葉がなんだか僕で遊んでいるように見えて反撃しようとすると彼の人差し指で口を塞がれる。
どうしてこうも名前で呼ばせたがるのだろう。
「辰哉くん！はいはい、これでいいでしょ...」
名前で呼べばこの状況から解放されるかもしれない。
彼の望み通り名前を呼ぶ。
「よく出来ました。」
不貞腐れた僕の頭をヨシヨシと撫でると満足気に笑った先輩。
やっと先輩の腕の中から開放される。
もー...なんなのこの人...。
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作者名：塩おにぎり | 作成日時：2023年4月16日 16時
