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恐る恐る目を開ける。
ん？
これどういう状況？
「あーあ、ビッショビショだわ」
僕から体を離した目の前の彼。
どうやら目の前の彼が僕に覆いかぶさって水から守ってくれていたようだ。
あれ？この人どこかで見たことあるような...
あ、例の体育のサッカーで渡辺先輩と目立っていた人か！
「で、何してくれてんの？」
彼は制服をパタパタとし水を払い除けながら彼らを見ている。
「いやっ、その...」
「俺はこいつに頼まれて...！」
「おいっ、ふざけんな！」
男子3人はオドオドと責任転嫁をしている。
「私は関係ないの！！ただ、こいつらに頼まれて...、辰哉くんの悪口言うからついムキになって！」
彼女はその"辰哉くん"と呼ばれる彼にしがみつき涙目で言い訳をしていた。
「それと、こいつに水をかけることに関係があるの？」
しがみついてきた彼女の肩を掴み、体から引き離す。
「そ、それは...」
どうやらこれ以上良い言い訳が思いつかないのか、下唇を噛んでそれ以上は何も言わない。
「あー、もうめんどくさいなぁ...。お前ら明日から来なくていいから。」
手をヒラヒラと振ると、僕のほうに振り返ってしゃがみこんできた彼。
男子生徒3人はガクンと床に膝をつき項垂れている。
「俺のせいでごめんね？」
彼の表情は笑顔を作っているものの悔しそうな表情だった。
「い、いえ...」
てか、彼はそもそも関係ない気がするし...
なんて考えていると、ふわっと体が宙に浮く。
いつの間にか、彼にお姫様抱っこをされていた。
とりあえずこの状況をどうにかしたい僕は黙って彼の肩に両手を置きバランスをとる。
「た、辰哉くん！！」
そのままトイレから出ようとした僕らに慌てて彼女が呼び止めてきた。
「その、"辰哉くん"って呼び方やめてくれる？その呼び方していいの1人だけだから。」
そんな彼女に冷たい視線をおくり、バッサリと切り捨てた彼は僕を抱えたままトイレを後にする。
男子トイレには彼女の悲痛な鳴き声が響いていた。
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作者名：塩おにぎり | 作成日時：2023年4月16日 16時
