これはただのトリップ物語ではない。【イナGO】

trip12 ページ12

「えっと…、ごちそうさまでした」


私がペコリと一礼すると、天馬は嬉しそうに「いいんだよ」と笑った。


駄目だこの人。良い奴すぎる。めっちゃくちゃ善人の仙人みたいだよ。


ああ今のはちょっと意味が分からなかった。


全く。無邪気すぎるのは、逆に相手側を辛くさせるのだぞ少年よ。


・


………まぁ、ご飯はおいしく頂きました。


他所(よそ)でタダ飯というのは、私の性分的にきまりが悪いので


夕食後。ここぞとばかりに家庭的スキルを披露し、皿洗いを手伝った。


「借りは返すぞ」的な感じのノリでやりましたよ。うん。


・


「あ――…。すっかりお邪魔しちゃったな…」


玄関を開けた先に広がっていたのは、薄暗い空。


街灯が、道行く人の足場を照らす為、親切に灯り始めた時間帯だ。


完全な真っ暗夜空へと化する前に、早いとこ河川敷までひとっ走り………


・


「Aってどの辺に住んでるの？送ってくよ」


・


・


「だ、だだだダだダ大丈夫！！ほんっと！！一人でも超平気ですから！！！」


良い子の鏡からの真心こもった気遣いを、私は首と両手を巧みに振るい拒絶した。


オイオイ。


年頃の男子が、夜道歩くのを付き添ってくれるってよ。ハハハ。


・


…しかし、貴方はできますか？


ホームレス(笑)である事をバラしてまで、

ラブコメ展開(笑)を掴み取りたいと思いますか？


思わないでしょう？


思った人そうとうアレだよ？羞恥心ってのが無いって評されるぞ。


「えー。でも、もう暗いから危ないよ？」


本気で心配する目でこちらを見据える天馬。


アンタが危ないわ。良くも悪くもな意味でデンジャラスだわこのコロネ。


「いいって！あの、私の住んでる所河川敷だから走ってけばすぐ着く……ッあ」


・


「……え？」


・



・

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