大切な存在 ページ30
*01*
(降谷side)
『降谷さんのお仕事は…警察の中でも厄介なんでしたよね…』
保護して1ヶ月にも満たない頃、
Aからそんな事を言われた。
『あぁ、詳しい事は話せないが…』
『だ、大丈夫です…』
警察庁に缶詰め状態になる日も決して少なくない。
まして3つの顔を使い分ける持つ僕に、時間的自由は極めて少ない。
『本当に賢い子だな…』
『…え?』
『フッ…何でも。』
"厄介"
そんな一単語ごときで説明のつく仕事内容じゃないのに、
曖昧ながらもAは瞬時に受け入れてくれた。
…そして、それ以上踏み込もうとはしてこない。
彼女なりに察してはくれているんだろうな。
つくづく出来た子だと思う。
『昨日は悪かった、夕飯作ってやれなくて』
『いえ!大丈夫ですっ』
『次回はAのリクエストに答えようか。』
『…はいっ!
ありがとうございます。』
.
.
「"ありがとう"って、良いよな…」
「……は、はい!?」
風見が運転する車での移動中、あの夕食の時を思い出しては、ボソリと呟いた。
「史上最高の褒め言葉だと思わないか?」
「"ありがとう"、がですか?」
「思わないのか?」
「いえ…」
彼女を保護下に入れてちょうど1ヶ月が経とうとしている。
そういえば明日か…
Aが警察病院へ2度目の検診へ行くのは。
「お礼が言える子は、心が綺麗なんだ。」
「……彼女、ですか?」
風見も察してくれたのだろう。
自分でも、表情筋が緩みきっている自覚はあった。
名前を出さずとも、誰の事かなんて明白だ。
「よくお礼を言う子なんだ。」
「良い子ですね」
「まぁ…反面、出来すぎじゃないかと心配にはなるが、最近では可愛らしい一面も見せてきてはいる。」
「か、可愛らしい…」
「何だ、可笑しいか?」
まさか僕の口からそんなワードが出て来るとは思わなかったのだろう。
「例えばな、先日なんて無理に料理を手伝おうとしてきたり」
「料理、出来るんですか彼女!?」
「いや…流石にそこまででは。」
あの時、様子が変だとは感じたが…
でも手伝おうとしてくれたのは純粋に嬉しかったな。
「回復は、順調ですね。」
「……まあな。」
少しずつではあるが、その女の子らしさは確実に取り戻していっている。
だから後は…
「人並みに恋愛をしてくれたら、な。」
121人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
juno108(プロフ) - とっても面白いです!続きがすごく気になります! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 73960369a7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年2月11日 21時) (レス) id: 70b86fd223 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴこ | 作成日時:2019年1月13日 2時