〈 02 〉 ページ29
*02*
毎日三食は絶対に食べろ、とキツく言われてるため、
寝起きで鈍った身体を引きずる形でコンビニへ向かった。
「……魅力がない」
商品の陳列棚を眺めては、一人言が出てしまう。
全国のコンビニエンスストアを敵に回したような言い方だけど…
それぐらい、降谷さんが作ってるご飯は輝いていた。
どれを買おうか悩んだけど、
あまり長考していると、バイトの店員さんの目についてしまう。
自分が公であまり目立ってはいけない立場にある事は、一応理解している。
「ありがとうございましたー」
コンビニからの帰り道は、米花町の色んな人とすれ違う。
夏だから、日暮れは遅い。
「ただいまーハロくん」
「アン!」
家に帰ると、いつもハロくんが飛びついてくれる。
ここが私の居場所なんだって、実感出来る時。
「ハロくんもご飯にしようねっ」
私にとっても、降谷さんにとっても、
ハロくんの存在は生き甲斐の1つなんだと思う。
「美味しい?」
「アン!」
「良かった。」
毛並みの整ったフサフサの毛を撫でる。
令くんは動物のお世辞上手かったけど、
実は私も満更では無かったりして。
「ハロくんは可愛いなぁ」
「アン!」
「自分で認めた…(笑)」
本当によく出来た子だと思う。
「ハロくん見てるとね、心が浄化されるの。」
頭を撫でながらそう言うと、「?」と言いたげな様子で食べるのを止め、私に身体を預けてきたハロくん。
人間の言葉までわかっちゃう…?
「浄化って言っても、嫌な事がある訳じゃないけど…」
そんな賢いハロくんが、
今、私が気持ちを打ち明けられる唯一の相手。
「最近さ…私変なんだよね」
ハロくんだから、何でも話せる。
「1人の時…ずっと考えちゃうんだ。
降谷さんの事。」
可笑しいよねって、自虐しても
ハロくんは純粋なその目で話を聞いてくれるから。
「それだけ心配なんだな…私、降谷さんが。」
早く帰って来てほしい、降谷さんに。
.
" Aっ… "
.
「!?」
今、降谷さんの声が聞こえた気がした。
幻聴…?
「大丈夫…大丈夫…」
考えれば考えるほど募る感情は、整理出来ないほど溢れていて…
私には、ただ待つ事しか出来ないという残酷な事実が胸に突き刺さった。
121人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
juno108(プロフ) - とっても面白いです!続きがすごく気になります! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 73960369a7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年2月11日 21時) (レス) id: 70b86fd223 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴこ | 作成日時:2019年1月13日 2時