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*03*
(降谷side)
何も身につけていない状態で、
身体半分はシャワーに打たれながら
Aはぐったりとしていた。
「A!」
何て事だ…
1番最悪な予感が的中してしまったのか…?
「名前を呼ぶと…言っただろう…!」
自 殺を試みたのか、今の体勢ではよくわからない。
一先ず耳障りなシャワーを止め、彼女を自分の方へ抱き寄せた。
「Aっ!」
一向に、彼女は目を覚まさない。
……が、手首にもどこにも、外傷は見られない。
「A!…A!」
それでも、いくら名前を呼んでも、
その瞳が開かれることはない。
「Aっ「…くん」
「えっ?」
「れ…い…くん」
" 令くん "
古川令の事か…
もしかすると、
夢の中で、会いに行っているのかもしれないな。
「ダメだ…」
抱き寄せる手に、力が入った。
透き通るほど白く、だが細すぎる肩や腕は
これまでの惨い生活を物語っていた。
服で隠していたであろういくつもの箇所に、
痛々しい痣が見てとれた。
「彼の所へ行ってはダメだ…!」
その壊れそうな身体は、
時間が経つごとに体温を奪われていく。
「生きろ、A!」
「!!」
固く閉じていた瞼が、少しずつ開かれた。
.
.
.
彼女の疾患は、急激な環境の変化に弱いらしい。
「私、浴槽で倒れたんですね…」
「本当に焦ったよ。」
あの後すぐに寝間着に着替えをさせ、
やや半乾きの彼女の髪をドライヤーで流す。
……美容師にでもなった気分だ。
「ごめんなさい、心配かけて。」
「無傷なら何だっていいさ。」
「……」
シャワーの次に今度は、ドライヤーの風音が静まり返った部屋に響く。
人の髪を乾かす機会に遭遇しないため、力加減がよくわからない。
それにしても、綺麗な髪だ。
その細い髪が、暖風に吹かれる度なびいた。
「なぁ、A」
「…はい?」
「恥ずかしい、とか思わないのか?」
「…え?」
案の定、彼女はキョトンとした。
……やはり。
「何でもないよ」
「…?」
年頃の女の子が、裸を見られたというのに
"恥じらい"
"異性への意識"
思春期の女子なら誰もが経験する感情を、
この子はまだ、知らなかった。
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juno108(プロフ) - とっても面白いです!続きがすごく気になります! (2020年5月20日 13時) (レス) id: 73960369a7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年2月11日 21時) (レス) id: 70b86fd223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴこ | 作成日時:2019年1月13日 2時