地獄からの抜け道 ページ1
＊01＊
「幸せ」なんて大それた物を、
今更欲しいだなんて思わない。
" A "
両親が愛情を持ってつけてくれた名前。
いつか、優しく呼んでくれるような人に
出会ってみたいなんて、
ほんのちょっと…夢見てるだけ。
.
「早く行ってこいよ」
「……私やっぱり、」
「ママ怒らせてぇのかよ！」
「…わ、わかった」
夢見るぐらい、許してほしい。
現実はこんなにも冷淡なのだから。
「……ねぇ、おじさん。」
忙しい都会の夜の街に、
17歳の未熟な少女の震え声は、場違いこの上なかった。
「何だい？お嬢ちゃん、高校生？」
「…うん。今お金がなくてさぁ…」
「へぇー、おじさんが何処にでも連れて行ってやるよ。」
「クックッ…アイツにしてはやるじゃん(笑)」
「もしもしママ？今ねAがホテルに…」
何度、死にたいって思っただろう。
「君みたいな可愛い子が、こんなおじさんと…良いのかい？」
「……うん、それより先にお金ちょうだい？」
「5万でいいかな？」
「あー、ちょっと足りないかも」
「はは(笑)じゃ、10万だ。その代わり＿＿＿＿」
一周回って、今はそんな事思わなくなった。
「ありがと…、ごめんなさいっ」
「えっ＿＿＿＿＿」
ただ募るのは、
「ごめんなさい、ごめんなさい、」
援交と騙した男を気絶させ、
奪ったお金を持って走る時の、罪悪感。
「ﾊｧ…ﾊｧ…」
「いくら？」
「ﾊｧ…10万…」
「うへ〜ビミョー」
「……」
「んで？どこまでやった？笑」
「何もしてない…」
「なぁんだつまんねーの」
この古びた一軒家には、
4人もの"コドモ"と、
"ママ"と呼ばれる女が１人、住んでいた。
「ママ！10万だってさ！」
ここの住人は本来、皆が皆赤の他人同士であった。
"ママ"が、身寄りのない"コドモ"たちを連れて来ている。
「ちょっと来て。」
「……はい」
この、威圧的な女が"ママ"。
バシンッ
狭い空間に響いた弾く音。
「お前を拾ってやったのは誰だと思ってんだ」
「……ごめんなさい」
確かに私は、随分前にこの人から拾われた。
でもそれは、 私を犯罪に加担させるため。
この家に愛など、そもそもが無かった。
「ごめんなさい…っ」
いっそ捕まってしまったほうが、楽なのかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
juno108(プロフ) - とっても面白いです!続きがすごく気になります！ (2020年5月20日 13時) (
レス) id: 73960369a7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年2月11日 21時) (レス) id: 70b86fd223 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴこ | 作成日時：2019年1月13日 2時
