FILE.305 業火の向日葵 ページ30
―――あの日の夜
普段のキッドの様子が違うことに気付いた私は、居ても立っても居られず快斗に電話をした。
『今、大丈夫?』
<その声は・・・・Aさんか。ああ、大丈夫だけど>
『ちょっと訊きたいことがあってね。単刀直入に言うけど、一体何があったの?』
<・・・というと?>
『この間のオークションで<ひまわり>を盗んでから、今日の犯行も含めて明らかに行動が可笑しいよ。いつもならこんなような手口じゃないのに・・・・・皆もいつものキッドの犯行じゃないって気付いてるよ?何かあったんでしょ?』
追究すると快斗は黙ってしまったが、やがてフッと笑った。
『快斗・・・?』
<この件に関して、俺がAさんに言うことはねェ>
『はあ?何言ってんの?』
絶対に何かあることはわかっている。
だけど、いくら追究しても頑なに口を割らなかった。
『ホントに私にも言えないことなの?』
<ああ・・・・>
『・・・・そう』
<・・・ただ一つだけなら教える>
『え、何?』
<”裏切り者”に気を付けて>
『ど、どういうこと?』
<俺が言えるのはそれだけだ。じゃあな>
『ちょ、ちょっと待ってよ!快斗?快斗!!』
快斗はそれだけ言うと、一方的に電話を切ってしまった。
―――――――
『―――って言うんだもん。ホントにどうかしちゃったのかなって思って、翌日全然集中できなくて、逆に私の様子が可笑しいって言われちゃったんだから』
「それは悪かったって・・・さっきも言ったけど、共犯がいる可能性を捨てきれなかったから、伝えるワケにはいかなかったんだよ。だからとりあえず、確実な情報を一つだけ伝えたってワケ」
『それが”裏切り者に気を付けて”ってことね・・・まぁ、それがホントにそうだと気付いた時にはびっくりしたけど。でも、どうしてあそこまでして守ったの?』
「”芦屋のひまわり”を見せてあげたい人がいたんだよ」
『見せたい人?』
「あの日、空襲で燃えさかる炎の中、密かに恋心を抱いていた大工に<ひまわり>を託され、彼が死んでいくのを目の当たりにした女性がな」
もしかして、その女性って日本興亜美術館で出会ったあのおばあさん・・・?
『・・・何でそんなこと知ってるの?』
「その一部始終を見ていた男から聞いたんだよ。その屋敷で、住み込みの書生をしていた男からね。初恋だった彼女を、火の海から救ったその男に頼まれたんだ。彼女に”芦屋のひまわり”を見せたいってね・・・・」
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セカイ(プロフ) - ちゃごいずごっどさん» コメントありがとうございます!更新がんばります! (2月7日 21時) (レス) @page46 id: 220b9e6626 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃごいずごっど - 本当にとても素敵な作品でどんどん読み進めてました😭😭終始幸せな気持ちでいられます、、!!これからも無理のない範囲で更新頑張って下さい!!応援しています✨✨ (2月4日 20時) (レス) id: 9d6e955330 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年1月17日 0時