FILE.287 業火の向日葵 ページ12
「キッドめ・・・やはり館内に残って―――」
『いや。この仕業、キッドじゃないかもしれませんよ』
班長から届いた資料を見ながら告げると、松田はその資料を覗き込んできた。
「どういうことじゃ？」
『7人のサムライの再調査で、怪しい人物が浮かび上がりました』
「ゴッホが7枚の＜ひまわり＞を描いたというフランスのアルルで、ソイツの双子の兄が亡くなっている。現地の警察は胸に銃創があり、右手から硝煙反応が出ていたことから、ジサツとして処理したらしい」
「して、その人物は？」
『「・・・東幸一」』
「あ、東じゃと！？」
『はい。東幸二の兄です』
＜ジサツじゃない、幸一は俺が殺した＞
突然東さんの声が聞こえてきて、わたし達はハッとする。モニターを見ると、2枚目の＜ひまわり＞の前に東さんが立っていた。
「何故だ？何故兄弟を！？」
＜幸一兄さんは、捜し求めていた”芦屋のひまわり”が見つかったことにより、心変わりしてしまったからだ＞
「何を言うておる！あの＜ひまわり＞は戦火によって焼失したはずじゃ！」
＜いや、それは史実と違う。あの日、1945年8月6日、芦屋に空襲があった日、市内は業火に焼かれ地獄絵図だったらしい。”芦屋のひまわり”を買った実業家に、大工として雇われていた俺の祖父は、盗難防止のためにしっかりと壁に固定された＜ひまわり＞を救出するため、一人で戦火に燃える屋敷に飛び込んでいったそうだ・・・＞
No side
実業家に大工として雇われていた東清助は、応接間の扉を蹴破り炎の先にある＜ひまわり＞に向かってまっしぐらに突き進む。持ってきたバールを力一杯壁に打ち付けていくと、額の隙間にバールを差し込み、＜ひまわり＞が壁から外れた。
その時、背後から「東さん！」と声がして振り返ると、実業家の娘と使用人が立っていた。
「来るな！」
使用人が肩を跳ねらせながら立ち止まると、＜ひまわり＞を投げつける。使用人が何とか受け取る横で、娘はハッと息を飲む。この時、東には両足に木材が刺さっており、血が溢れ出ていた。
「お嬢様！＜ひまわり＞を頼みます！」
「いやっ！東さん！東さーーん！」
「例え戦争に負けても、その＜ひまわり＞だけは取られちゃなんねぇ・・・今度こそこの日本で・・・武者小路先生がおっしゃったような美術館で、世界中の人にその＜ひまわり＞を・・・」
使用人が＜ひまわり＞と泣き叫ぶ娘を抱え込みながら廊下に飛び出した瞬間、炎が一気に膨れ上がった。
FILE.288 業火の向日葵→←FILE.286 業火の向日葵
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1725人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セカイ(プロフ) - ちゃごいずごっどさん» コメントありがとうございます！更新がんばります！ (2月7日 21時) (
レス) @page46 id: 220b9e6626 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃごいずごっど - 本当にとても素敵な作品でどんどん読み進めてました😭😭終始幸せな気持ちでいられます、、！！これからも無理のない範囲で更新頑張って下さい！！応援しています✨✨ (2月4日 20時) (レス) id: 9d6e955330 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セカイ | 作成日時：2024年1月17日 0時
