FILE.406 本庁の刑事恋物語8 左手の薬指 ページ31
「それに、Aがテープを調べるっつったのは、ワカメになっているかどうかじゃねェ。指輪がはまっていた左手中指のつけ根に血が付着していて、何故か一ヶ所途切れていた。
だから、アンタが持ってるテープのどれかにあるはずだぜ。密室の綱渡りに使われた、諸口の血の付着したテープがな」
全てを見破ると、出島さんは開いた口が塞がらなくなったまま、その場に立ち尽くした。
「で、出島くん・・・」
「お前、まさか・・・秋場のことで・・・・・」
二人が声を掛けると、出島さんは「・・・・綱渡りか」と口を開いた。
「秋場もよく言ってたよ。諸口先生との付き合いは、綱渡りの連続だってね・・・」
「綱渡り?」
「秋場は大人しい男だったんですが、先生の担当になってからいつもどこか包帯を巻くようになった・・・・何故だと思います?先生に言われて試していたんですよ。先生が考えた殺人トリックが、本当に出来るかどうかを自分の身体で・・・・」
『「え・・・?」』
「もちろん、本当に死なないように細心の注意を払ってね」
「オ、オイ!じゃあまさか、秋場が密室で死んだのって・・・・」
「ああ。秋場の会社の机の遺品整理をしてる時に見つけたよ。秋場と全く同じ死に方が書かれたトリックノートをな!!」
『だったら何でそれを警察に出さなかったの!?』
過去のことを問い詰めても何も変わらない。それはわかっている。だけど、そう言えずにはいられなかった。
「無駄ですよ・・・問い詰められても、先生は”秋場が勝手にやったこと”って言うぐらいです」
「で、でも事故は事故でしょ?」
「いや、先生は別のインタビューでこう言っていましたよ。”この歳になって、最近ようやく殺人者の気持ちがわかってきた。推理作家にとって、この上ない喜びだ”ってね・・・・それで僕は確信したんだ。先生が秋場を利用して知りたかったのは、リアリティーじゃなく、殺人者のメンタリティーだったんだなってね・・・・・・」
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セカイ(プロフ) - 月見だんごさん» コメントありがとうございます!これからの恋愛模様もお楽しみください✨ (3月22日 22時) (レス) id: 220b9e6626 (このIDを非表示/違反報告)
月見だんご - とても面白かったです✨更新楽しみに待ってます😆 (3月21日 8時) (レス) id: 3095a46f05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年3月10日 14時