FILE.405 本庁の刑事恋物語8 左手の薬指 ページ30
考え込む毛利さんを横目で見て、私は軽く咳ばらいをする。
『そう、細くて長い糸なようなモノ。輪ゴムと違って、指輪に引っ掛からなくて細くツルツルしてる長い糸のようなモノで、いつもはメジャーみたいに巻いてしまってある都合のいいモノ・・・・何か思いつきません?』
「まさか・・・カセットテープか!」
『カセットテープならテープを長く引っ張り出して指輪に通し、そのテープの先とカセット本体を換気窓の外に出しておけば、毒殺した後、部屋を出て鍵を掛け、外に出しておいたテープの先を鍵の穴に通して、テープを高く持ち上げるだけで、鍵は重力によってテープを伝い、遺体の掌に到達し、その後でテープを巻き取ればテープは鍵の穴と指輪をスリ抜けてカセットに収納され、密室が完成する』
「そんなことが出来るのは、普段からカセットテープを持ち歩いていて、後で警察に調べられても不審に思われない人物。そんな人はこの中じゃ・・・・」
『ライターの出島さん』
「アンタしかいねェよな」
松田と毛利さんとともに出島さんに視線を注ぐと、出島さんは一歩後退した。
「恐らくアンタは、今朝やる予定だった対談企画の段取りの最終確認だとか言って、諸口の部屋に入れてもらい、隙を見てコーヒーに青酸系毒物を混入して毒殺。そんで、今のトリックで密室を作り上げた」
『どうでしょう。間違ってますか?』
突きつけられた出島さんの目が大きく見開いた。
『まあ、あなたが持ってるカセットテープを調べれば、わかりますけどね』と告げるも、出島さんはフッと笑った。
「ワカメになっていると言いたいんでしょうけど、僕言いましたよね?このレコーダー、調子が悪いって。ワカメになってるテープなんていっぱいありますよ!それに、巻き取る時にあんな大きい音がすれば、誰かが聞いて―――――」
「鉛筆だよ」
「え?」
「アンタが昨夜、諸口さんに借りた鉛筆をカセットの穴に突っ込んで回せば、レコーダーを使わなくても、かなり短時間でテープをさほど痛めることなく、巻き取ることが出来る!!私も子供の頃よくやりましたよ・・・ふざけて外にたくさん出してしまったテープを巻き取る時に、鉛筆を膝にあててカラカラってね!」
鉛筆・・・・そんなことがあったのか。
毛利さんはわたし達が知らない情報を交えながら、出島さんを論破する姿は、さっきと全く違い堂々としている。
ホント、いつもこうだったらいいのに・・・・なんて失礼かもしれないけど。
FILE.406 本庁の刑事恋物語8 左手の薬指→←FILE.404 本庁の刑事恋物語8 左手の薬指
1905人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セカイ(プロフ) - 月見だんごさん» コメントありがとうございます!これからの恋愛模様もお楽しみください✨ (3月22日 22時) (レス) id: 220b9e6626 (このIDを非表示/違反報告)
月見だんご - とても面白かったです✨更新楽しみに待ってます😆 (3月21日 8時) (レス) id: 3095a46f05 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セカイ | 作成日時:2024年3月10日 14時