FILE.386 裏切りのホワイトデー ページ11
奥さんに突きつけると、観念したのかふぅ・・・と息をついた。
「酸味の恨みでしたからレモンにしたんですけど、やっぱり失敗でしたわね。隠しにくいんですもの・・・」
「酸味の恨み・・・ですか」
「ええ・・・・私と主人が出会ったのは製菓学校。主人は先生で私は生徒でした・・・・」
奥さんはポツリポツリと語り始めた。
「何年か経ったある日、その学校からお菓子のコンクールに2人出ることになって、私もその1人に選ばれたんです。でも、出る前から勝負は見えていました。優勝はその学校から出るもう1人の彼で決まっていましたから。彼が作り出す酸味が効いたスイーツは絶品で、海外の有名店からスカウトに来るほどでしたのよ・・・・
それなのに、まさかその彼がコンクールの前日にジサツするとは・・・・その時は、天才ゆえの悩みごとがあったのだろうと思い、彼の分もと奮起して私が優勝しましたけどね・・・」
『じゃあ、さっき”2番目”とおっしゃっていたのは・・・』
「彼が出てたら私の優勝は有り得なかったから。そして数年後、優勝を喜んでくれた主人と結婚したというわけ・・・彼を死に追いやった、あの男ね・・・・」
「死に追いやった・・・・?」
「この前、酸味が効いたケーキを食べて寝込んだ主人が白状したのよ。酸味嫌いになったのは、彼を思い出すからと・・・・・コンクール前に彼が作ったパイを食べて、主人は彼に言ったそうよ。”酸っぱすぎるな。お前、舌大丈夫か?”―――ってね・・・・
主人を完全に信頼していた彼は、ノイローゼになり自ら命を絶った。主人は泣きながら言ってたわ。私を優勝させるためだったとか、まさか死ぬとは思わなかったとか・・・・」
奥さんは少し上を見上げながら、「私と彼がどんなに・・・・・」と震える声で呟いた。
「どんなに愛し合っていたかも知らずにね・・・・・・」
そして、奥さんの頬に一筋の涙が流れた。
FILE.387 裏切りのホワイトデー→←FILE.385 裏切りのホワイトデー
1905人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
セカイ(プロフ) - 月見だんごさん» コメントありがとうございます!これからの恋愛模様もお楽しみください✨ (3月22日 22時) (レス) id: 220b9e6626 (このIDを非表示/違反報告)
月見だんご - とても面白かったです✨更新楽しみに待ってます😆 (3月21日 8時) (レス) id: 3095a46f05 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:セカイ | 作成日時:2024年3月10日 14時