FILE.372 本庁の刑事恋物語7 ページ47
松田side
『ただ、怒ってるのは自分自身によ』
「え?」
『被疑者の精神状態を全く考えもせず、捕まえることだけに目の色を変えてた自分に腹が立ってるからで、陣平のことじゃないから』
運転しながら横目でAを見ると、やっと顔をこっちに向けた。
『人を捕まえるより遥かに大切なこと・・・・・とても素晴らしいことをした陣平が大きく見えて、なーんか悔しくてさ・・・・まあ、陣平があんな行動をするなんて、昔じゃ考えられないけど』
「・・・・褒められてんのかけなされてんのか、わかんねェな」
苦笑すると、Aはフッと笑った。
『成長したってことよ。ただ、警察学校時代もそうだったけど、口が悪くて態度が大きくて、こうと決めたら後先に考えずに突っ走る。まるで傍若無人を絵に描いたようなところは、変わらないけどね』
「やっぱり、けなしてるだろ」
『さぁ、どうでしょ』
運転しているから視線は前を向いているから表情はわからないが、言葉の節々からAはもう怒ってないようなそんな感じが伝わってくる。まあ、こういう小言をグチグチ言い合っている方が、俺達っぽいと思ってしまうが。
『ただ・・・・』
「ん?」
『私はそんな陣平が好きなんだけどね』
心臓が跳ねたような気がした。
コイツ・・・前触れもなく突然変なこと言ったりしだしたりするから、心臓がもたねーんだよな。当の本人はそんなの気にしてないんだろーけど、こっちの身にもなってみろってんだ。
・・・・・・実際には伝えねェけど。
「・・・・・・オメェ、趣味悪りーな」
『・・・・悪くて結構ですー』
「ま、俺もあんま強く言えねェけどな」
『え?』
「周りを優先して、自分のことあと回しにして、すぐ無茶しよーとする。男勝りでおてんば娘みてーなヤツが、俺の趣味だからな」
『・・・・・趣味悪ゥ』
「だろ?」
Aはまた顔を窓の方に向けた。ま、大方顔を見られないようにしたんだろうけど、向いたところで微かに窓に反射してるし、何より耳が赤くなってるからバレバレだけどな。
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年2月3日 19時