FILE.370 本庁の刑事恋物語7 ページ45
ひとまずこれで誘拐犯は特定出来た。
あとは踏み込むだけとなり、『陣平！』と呼ぶ。
『六田さんの家に踏み込むよ！―――って、どこ？』
部屋中を見渡したり、廊下を見たりするものの松田の姿が見当たらない。そういえば、さっきから声が全然聞こえないとは思っていたけど・・・・こんな時にどこ行ったのよ、と思いながら毛利さん一家と佐藤さん、高木くんとともに部屋を飛び出した。道中を走りながら、目暮警部に連絡を入れる。
『誘拐犯が判明しました！六田卓児です！逃亡の恐れもありますから、任意同行を拒否された時は、
＜いや、それは出来んよ・・・＞
『え？』
＜ついさっき彼が血相を変えて飛んできてな・・・＞
『か、彼って？』
電話をしながら走り続けていると、六田さんの家に到着した。家の前にはパトカーが数台停まっていて、目暮警部の姿もある。
「おお、黒羽くん！彼だよ、彼！」
『じ、陣平！？』
目暮警部が指差した方向を見ると、道路に座ってブロック塀に寄りかかりながら、息を切らしている松田がいた。服や手などのいたるところには、血が付いている。
『どうしたの！？その血は！？』
「まさかテメェ、格好をつけて乗り込んで犯人とやり合ったんじゃ・・・・」
「いや、それは誘拐犯の六田の血だよ」
「「ええッ！？」」
「助けたんだよ。部屋に突入した松田くんが六田をね。切った手首を湯船につけて、ジサツをしようとしていたんだ」
『ジ、ジサツ！？』
「たった今救急車で運ばれてな。発見が早かったんで、なんとか助かるそうだ。任意同行もその後の様子を見てからだな」
『でも何でジサツするって・・・・』
松田を見ると「あのガキの靴下だよ・・・」と呟いた。
「濡れていたからワケを聞いたんだ。ガキがヤツの家に戻ったら知らん男が風呂場にいたってな。咄嗟に、変装を解いて風呂場でジサツを図ったって思ってよ。
靴下が濡れたってことは、風呂場の中に入りヤツの傍に行ったってことだ。その時、ヤツに意識があればガキを部屋には入れさせねェからな」
「なるほど・・・・六田さんは郵便受けから送り返されていた宝くじを見つけ、将史さんの気持ちも知らず、犯してしまった罪の重さに耐えかねってところね・・・」
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作者名：セカイ | 作成日時：2024年2月3日 19時
