FILE.330 黒鉄の魚影 ページ5
男を追っていると突然身体が傾いた。そして地面に強く叩きつけられる。目を開けると松田が私に覆いかぶさっていた。
『じ、陣平!?何で―――――』
「狙撃だ!Aを狙ってる!!」
『ええッ!?』
松田は起き上がると、車の陰に背中をつけて後ろの様子を伺いだした。
『でも、早く追わないと―――――』
「落ち着け!俺達には足がないんだぞ!追っていったところで、ヤツらは車に乗ってるからすぐに逃げられるだけだ」
『そ、そっか・・・・・』
パシフィック・ブイにはヘリで、このホテルには警備艇で来た。車もバイクもない状態で追うのは無理だ。松田に飛びつかれたことで、車の陰に身を潜められたが、どうすることもできない。スナイパーに狙われている状況で飛び出すなどジサツ行為だ。
『あれは・・・?』
すぐそばにサイドミラーが落ちていた。恐らく弾丸はソレに直撃したのだろう。手に取ると「それ貸して!」と横から声がした。
『コ、コナンくん!』
「ボクが合図するまで、そこを動かないで!!」
『・・・・う、うん』
サイドミラーを渡すとコナンくんは近くの植込みの奥に走っていった。
「この後どうする?」
『・・・・とりあえず、蘭ちゃんに報告する。さっきコナンくんが阿笠さんに電話してたから、追うのは2人に任せよう』
「だな」
すると「今だ!走れ!!」と合図がきて、車の陰から飛び出しホテルに向かって目一杯走った。
ホテルのロビーに入ると「黒羽刑事!松田刑事!」と蘭ちゃんが駆け寄ってきた。
「何があったんですか!?突然大きな音がしたんですけど・・・・・」
『落ち着いて聞いてくれる?哀ちゃんが・・・・・・』
「哀ちゃんが・・・・?」
『・・・・・さらわれてしまった』
「えっ・・・・」
『ごめんなさい。もっと早く気付いてれば・・・・・助けられたのに・・・・!』
俯くと「黒羽刑事が悪いワケじゃないんですから、顔上げてください!」と言われた。
『完全に私の力不足・・・』
「そんなことないです!気付いて助けようとしてくれただけで・・・・」
『そんなの警察だから当たり前だよ』
「A、落ち着け。気が動転するのもわかるが、言い合ったところで何も生まれやしない」
『・・・・・そうだね』
そうだ、松田の言う通りだ。不安なのは蘭ちゃん達も一緒。私がしっかりしないと、余計に不安をあおってしまうだけだ。
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年2月3日 19時