FILE.350 黒鉄の魚影 ページ25
<まあ知ってるならいい。それと、さっきヒロから聞いたんだが、さらわれた少女の奪還はどうやら出来たらしいな>
『うん、エンジニアの人もね。ヒロがいなかったら出来なかったことだけど・・・・降谷もありがとね。あの時情報を教えてくれて』
<別に構わない>
フフッと笑うと「なあ」と呼び掛けられる。
<ちなみにだが、そっちではこの事件どういう感じになったんだ?>
『ああ・・・被疑者行方不明で終息しそうだけど、それがどうかした?』
<その被疑者がな、帰還せずに消息を絶ったらしいんだ>
『え・・・』
<ああ。ヒロによると、潜水艦に攻撃が与えられて機能停止になった後、小型潜水艇で脱出したらしいんだが、どうやら脱出する直前にヤツらが潜水艦に爆弾を仕掛けたらしくてな。被疑者とは潜水艦で落ち合う予定だったんだが、このことを伝えている様子がなかったから、爆発に巻き込まれたんだろうって言っていてな・・・・・>
『そっか・・・・』
っていうことは、また被疑者死亡で迷宮入りか・・・・・
<まあ、Aにだけ伝えておこうと思ってな。どうやらヤツらと接触したらしいし>
『・・・そうね。接触したけど・・・・・もう関わりたくないよ。下手に首突っ込んで死にたくないし』
<それもそうだな。ヤツらは危険だ。あまり関わらない方がいい>
『それは身をもって体感しました。組織の壊滅は公安の2人に任せます』
<フッ、そうしてくれ。それとこのことは――――>
『内密に、でしょ?』
<ああ、頼む>
もうわたし達が出る幕ではない。あとのことは2人に任せよう。
すると、向こうから<安室さーん?>と声がした。そして降谷の<今行きまーす>という声もする。
『どうやらここまでみたいね』
<みたいだな>
『連絡ありがと。ヒロにもそう伝えておいて』
<ああ、わかった>
電話を終えて、窓から見える街の風景を眺める。
事件の裏で暗躍していた謎の組織・・・・次に関わってしまった時には自分自身がどうなるかわからない。でも2人は危険と隣り合わせの状況の中、潜入しているんだなと思うと肝が冷える。
そんな心の中とは裏腹に、街は穏やかに流れていた。
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年2月3日 19時