FILE.349 黒鉄の魚影 ページ24
―――数日後
本庁に戻って来たわたし達はいつもと変わらない日常を送っていた。
八丈島から帰る日に松田がロビーで言っていたように、あの事件は被疑者行方不明で終息を迎えようとしていた。
それに、哀ちゃんをさらったもう一人の男と私を狙ったスナイパーの存在もわからないままだった。コナンくんと哀ちゃんは知っているだろうけど、それについて特に事情聴取を行おうとはしなかった。事情聴取をしても絶対に教えてくれなさそうだし。
もちろんコナンくんが潜水艦を撃退したことは、私と松田以外は知らないし、誰にも言っていない。
<・・・・・八丈島近海にあるパシフィック・ブイの復旧を断念し、世界中の防犯カメラを繋ぐインターポールの施設は、日本以外の国に置くことになると発表しました>
「ま、やっぱそうなるよな」
捜査一課に設置されているテレビから流れているニュースを耳にした松田は、あの日と同じようにポロッと呟いた。
『そうするのが妥当でしょうね』
「あんな事件が起きたんじゃ、しょうがねェよな」
連日テレビでは、パシフィック・ブイについて報道されている。大きな事件だったし、仕方がないことだけれど。
<続いてのニュースです。EU議会のマリオ・アルジェント議員の意識が回復しました・・・・>
アナウンサーの声を聞いて、捜査資料を見ていた手を止めた。パッとテレビに視線を移すと、あの時見た顔写真とともに報道されていた。
「へー、助かったんだな。あの議員」
『ね。よかった・・・・』
ホッと胸を撫でおろすと携帯が鳴った。
『ゴメン、ちょっと席外す』
「オー」
部屋を出て人気のないところに移動し電話に出ると、開口早々<僕だ>と言ってきた。
『警察に対して、オレオレ詐欺ならぬボクボク詐欺ですか?』
<はあ?>
『なんてね。どうしたの降谷?』
<さっき、EU議会のマリオ・アルジェント議員の意識が回復したと耳にしてな>
『ああ、私もさっきニュースで見たよ』
<何だ、知ってたのか。Aのことだから気にしてるんじゃないかって思ったんだがな>
『何?心配してくれてたの〜?』
カマを掛けると、はあ・・・と溜息をつかれた。
え、そんな面倒くさかった?
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年2月3日 19時