FILE.344 黒鉄の魚影 ページ19
「きっとその仕草が癖になっていたんでしょう。女性であろうとするあまりに・・・・」
「女性であろうとした？」
「ええ。私の勘が正しければ、この人は恐らく女性ではないと思いますよ」
全員が一斉にグレースさんに視線を向けると、グレースさんは不満顔で腰に手を当てていた。
「反論しないということは、やはりあなたは・・・・」
「驚いて声が出ないのよ！女じゃないなんて言われると思ってなかっ――――――」
「ところで黒羽刑事。哀くんを拉致した2人組の1人は、黒羽刑事の蹴りで首を負傷しているとか」
『ええ。だから、あなたの首にまだあるはずよ。私がつけた痣がね』
笑みを浮かべて言い終わるのと同時に、グレースさんが首に巻いてたスカーフを背後に立っていた黒田管理官が剝ぎ取った。
「その痣・・・！」
「て、てか、喉仏がある！マジかよ！！」
エドさんに指摘されると、グレースさんはフッフッフ・・・・・と低い小さな声を上げながら眼鏡を外し、カツラを掴み取った。カツラの下から現れたのは、コーンロウに編み上げられた髪。
やっぱり・・・・コイツがピンガ・・・・
全員がピンガに夢中になっている間に、私は誰にも気付かれないように後退すると、最上部にある出入口に続く階段を上がった。
「コーンロウの男・・・フランクフルトに侵入したのもアンタだな？」
「ああ」
「その時、ユーロポールの職員に見つかったワケか・・・」
「帰ったはずだったんだが、間の悪い女だよな」
ピンガは右耳につけたピアスを左耳に付け替えながら、身体の向きを変えた。
「レオンハルトさんを殺害した動機は？」
「・・・予定外の拉致のせいでな。防犯カメラ映像を改ざんする必要が出てきた。仮で処理した後、完全に痕跡を消そうとしたんだが、あのガキが追究したお陰で、レオンハルトが痕跡に勘づきやがったんだ。だが、改ざんした記録は消した。俺がやった証拠はない。後は、ヤツさえ消せば万時上手くいくはずだったんだがなァ！！！」
次の瞬間ピンガが走り出した。黒田管理官が「逃すな！」と叫ぶのと同時に、ピンガは傍にいた職員達を突き飛ばして逃走する。デスクに飛び乗ると、さらにジャンプをして階段の手すりに飛び乗り、踊り場を回り込んで階段を駆け上がってくる。
やっぱり先回りをしてて正解だったわね・・！
私は手すりに飛び乗ると、拳を握りしめてピンガに飛びかかった。
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作者名：セカイ | 作成日時：2024年2月3日 19時
