検索窓
今日:1,110 hit、昨日:1,185 hit、合計:87,772 hit

FILE.343 黒鉄の魚影 ページ18

「キャンセルの連絡を入れているはずです。そして犯人はその後直美さんの拉致と同様に、清掃カートに眠らせたレオンハルトさんを入れて清掃員の姿でカフェに行き、清掃中のプレートを入口前に置いて誰も入れないようにした。もちろん監視カメラはループ映像にしてね。そこで犯人は、レオンハルトさんに毒薬を飲ませて殺害。恐らく、息絶えるまでその場にいたはずです。死にざまを観察するためにね」

「ひどい・・・」と蘭ちゃんが口元を押さえる。その場にいるほぼ全員が、険しい顔をして毛利さんを見つめた。



「先に映像を作ってしまうと、どんな死に方をされるかわからないですからね。その後犯人は、レオンハルトさんに似た服に着替え、毒薬に苦しむ芝居をしたんです。テーブルに隠れるように倒れたのは、実際のカフェにある監視カメラの映像とリアルタイムで切り替える時に、齟齬が生じないようにするためです」

「似た服っていうのは?」

「何しろこの映像は、顔だけがCGで身体は犯人ですから」


毛利さんの衝撃の発言に場が騒然となる。モニターにはその時の映像が繰り返し流れていて、全員がモニターを注視した。



「身体までCGで作るには時間が足りなかったんでしょう」

「しかし、どうやってそんなことを・・・・」

「拉致されたヤツが開発した”老若認証”の技術を使ったんだよ。CGで顔を作れるんだ。職員のデータなら事前に取っててもおかしくねェだろ」

「で、ですが・・・どう見ても本物にしか見えません。これがニセ動画っていう根拠は・・・・」

「私が初めにこの映像を見た時、強い違和感を覚えました」

「違和感?」

『彼の手元をよく見て』


全員はモニターを見上げる。映像ではレオンハルトさんが紙コップを持って歩き、ふと立ち止まると毒薬らしきものを口に含むと、続けてコーヒーを飲む。そして紙コップの縁を親指で拭う。



一番最初に「あっ!」と蘭ちゃんが声を上げた。

「あれって・・・・」

『そう。口紅をしている女性特有の仕草よ』

「このコップの縁を拭く仕草。あなたはここでよくそうしてましたよね?




グレースさん!」



俯いていたグレースさんは、名前を呼ばれると顔を上げてフッと笑った。

FILE.344 黒鉄の魚影→←FILE.342 黒鉄の魚影



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (73 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1804人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:セカイ | 作成日時:2024年2月3日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。