FILE.338 黒鉄の魚影 ページ13
遺体を調べ終えたわたし達は、メインルームに戻ってきた。モニターに映されているカフェの監視カメラ映像や英文メールを見ながら思案を巡らせていると、「バッグドアだ!」とエドさんが叫んだ。
「どういうことだ!?」
「関係者が検索されたら引っ掛かるように、トラップを仕掛けておいたんです!」
エドさんが説明しながらキーボードを叩くと、モニターに男性の写真が映し出される。
「誰なんだ?コイツ」
「・・・・・マリオ・アルジェント」
「EU議会の議員で、直美の父親です!」
『な、何ですって!?』
「彼のおかげで、ここがユーロポールの防犯カメラと繋げられたんです!」
「エド!今なら割り出せるはずよ!」
「ああ!もうやってるよ!」
「ユーロポールに議員の保護を要請!」
神妙な顔つきでモニターを見ていると、松田が肩を叩いてきた。
「・・・・まさかあの組織か?」
『・・・恐らく。直美さんを拉致したのもきっとそう。それで彼女の作った”顔認証システム”で検索して居場所を探しているのかもね』
やがてマリオ議員の所在地が判明し、モニターに映像が映し出された。
ホテルの窓辺に置かれたソファに腰かけて新聞を読んでいると、携帯を手に取って立ち上がった。新聞を放り投げ、歩きながら何やら話し込むと突然窓を振り返る。窓に駆け寄って外を見渡しかと思うと、すぐに壁に隠れた。だが、警戒をしながら再び半身を出した瞬間、撃たれたのか身体が後ろに倒れ、ピクリとも動かない。
『そ、そんな・・・・』
本当に容赦も何もない組織だ。そんな組織に立ち向かおうとしているのかと思うと、足がすくんで手が震える。
その時、手を誰かに握られた。上を見ると松田がモニターを見ながら手を握っていた。
「大丈夫だ。俺がついている」
『うん・・・・』
手を握り返して、私もモニターを見つめた。
絶対に・・・助けるから。もう少し待っててね・・・・・
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作者名:セカイ | 作成日時:2024年2月3日 19時