溺愛 (ページ2)

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その日の彼女はただひたすらにイライラしていた。

それこそ顔には出ないが彼"ら"にはお見通しだ。

彼女はイライラしながらも購買の近くを通る。

「うわ…来たよ」

「大声で言うな馬鹿」

「どうせ聞こえてないだろ」

これだからあまり人混みに行きたくない彼女はため息をこぼす

所詮名前も顔も知らない人の言葉なんて無視すればいいが
彼女はそうともいかない。

傷つくものは傷つく。心が。

彼女にはあまりいい噂はないようだ。自覚はある。

人に無愛想にしてしまうだけだ。

少し歩いて空き教室に入る彼女

空き教室だから人こそ居ないと思っていたが今日は違ったようだ。

「…」

「あれれ、噂の一ノ瀬さんじゃーん！！なにしに来たの〜？こんな人気のないところに！あ！それとも俺にも春が来たのかな！？なになに告白〜？？」

入ってそうそう知らない人からのマシンガントーク

耳につくようなその汚い声は今すぐにでも塞ぎたくなるような感覚

今時こんなキチガイ野郎に会うなんて

めんどくさいと思いながらもそそくさとこの教室から出ようと回れ右をするが

「え〜無視ぃ〜？？お話しようよー！」

腕を掴まれてどうにも逃げれない。

そんな時でも彼女は冷静さを忘れない

「……」

「きこえてるー？うーん…あ！俺に告白でしょ！！！！
やだなぁ照れないでよ、大丈夫大丈夫」

なにが大丈夫なのだろう。なにも大丈夫じゃない。

今すぐその顔面に拳を入れたいが騒ぎは起こしたくない。

ただでさえ彼女の良い噂なんて聞かないんだから。

だが忘れないでほしい。彼女が一言も発さないのはイライラしているからだ。こんな日に限ってこんな野郎に絡まれるなんて余程運がないのだろう。

そしてこれも忘れないでほしい。

彼女は1人で行動していたのではない。最初から"3人"行動だったのだ。
がしかし彼女のイライラで早足だったから後ろの2人が見失っただけ。

そっと彼女の目が閉ざされた。
否，後ろに立つ彼の手によって見えなくなった

「うちのモンがお世話になりました〜」

「知り合い？A」

違うと否定するように首を左右に振る

彼女と接する時は御用心ください
後ろ盾が居るのをお忘れなく

「知らない人か〜。手、離してくださいね〜」

「行こっかA。お昼食べよ」

「ありがとう、ありさか、だるま」

彼女が言葉を発する人も限られてるとか