メリークリスマス ページ18
なんなんだ、このパンダ。
「あの〜・・これ・・・どうぞ。」
もじもじしながら、ケーキの入った赤い箱を差し出す。
売れ残りを俺にくれるってことか？
チャンミン「・・・人違いじゃないですか？」
そうじゃないとしても、こんな交差点に一人で(一匹で)立ってる怪しいパンダから受け取るはずがない。
毒入りだったら怖過ぎる。
チャンミン「大体なんでクリスマスにパンダなんだよ。
普通、トナカイかサンタだろ。」
僕の「要らない」オーラにしゅんとしてしまったパンダ。
重そうな頭をもたげて、がっくりうなだれている。
「パンダは幸せを運んでくれる生き物なんですよ？
・・・あなたに幸せなクリスマスが訪れますように。」
くぐもった声でそう言いながら、「はい」と箱を差し出す。
幸せなクリスマス。
今の僕には一番無縁なのに。
僕は、その差し出された箱を上から覗き込んだ。
小さな丸いショートケーキに、苺。チョコレートのプレートには『メリークリスマス』の文字。
チャンミン「・・・腹、壊さない？」
小さな声で尋ねると、そのパンダは頭が取れそうな勢いでブンブン縦に振った。
チャンミン「・・・一人でやけ食いするってのも、アリかな。」
「・・・え？」
そのパンダにお金を払うと言っても、かたくなに拒否された。
チャンミン「・・・ありがとう。」
「メリークリスマス。」
チャンミン「・・・メリークリスマス。」
そう言うと、パンダは満足そうにのっしのっしと歩いて交差点近くのケーキ屋に入って行った。
その後ろ姿を見ながら、なんだか笑いが零れる。
クリスマスに僕のところに幸せを届けにきてくれたのは。
トナカイでもサンタでもなくて、白黒のパンダ。
新たな恋なんて、まだ考えもつかないけど。
いつかまた幸せな想いを経験できるとすれば、きっとそれが僕の初恋の終わりなんだろう。
Aさん。
ニューヨークの空は、雪が降ってる？
僕もあなたに負けないようにいっぱい頑張るから。
そしたらいつか、またどこかで再会しよう。
交差点の信号が青に変わる。
僕はゆっくりと前を向いて歩き出した。
空から舞い落ちてきた、粉雪を一歩ずつ踏み締めながら。
前篇 終わり
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ちなみ(プロフ) - amiさんとなおさんのコラボ作品、とっても良かったです。身代わり？とか思ったけど、私は私の良さがあったから、チャンミンも自分の気持ちに気付いてくれた。心がほんわかしました。ありがとうございます。 (2017年1月8日 21時) (
レス) id: 78ec05bb04 (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - ここあさん» 読んでくださってありがとうございました！忘れられない人が居るチャンミンと、そのチャンミンを想い続ける彼女。どちらもつらい恋でした。泣いた分、最後のハッピーエンドで笑って頂けたかな？私にとっても思い出深い作品なので、感想嬉しかったです。 (2015年6月26日 22時) (レス) id: 39eb0052e1 (このIDを非表示/違反報告)
ここあ - 泣きました(ToT)すごくステキなお話ですね。ずいぶん皆さんから遅れたコメントで申し訳ないです(>_<) 途中胸が苦しくなるくらい切なかったけど、最後は幸せになれてよかったです♪ (2015年5月26日 1時) (レス) id: 6016df3393 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - アスカさん» アスカさん、コメントに気付かず、お返事が遅れてごめんなさい(>_<)このお話は、なおちゃんと二人で作った私にとっても思い出深いお話ですので、そんな風に仰って頂けてとても嬉しいです！最後まで読んで頂き、感想まで、ありがとうございました！ (2015年4月22日 11時) (レス) id: 65b029e398 (このIDを非表示/違反報告)
アスカ(プロフ) - コラボ作品、素敵でした。ありがとうございます。いい作品も読むことが出来て私も幸せです。 (2015年4月11日 9時) (レス) id: b6b3a6f85e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なお ami
x他1人 | 作成日時：2014年10月16日 21時
