誰かの笑顔の為に。【狼ゲーム】【短編集】 (ページ29)

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真剣勝負三回戦【霜月ユキナリ】ページ29

今日も、いつもと同じように誰か遊べる人がいないか探す。

廊下を歩いていると、楽しそうな声が。

「うへ、うへへ…」

「チエ、かえってこーい!!」

「チエちゃん、面白ーい♪」

「もう少し静かにしてくれ…。」

いつもほぼ誰もいない大部屋には
チエちゃんやリツちゃんがいた。

とっても入りたい。
なのに、先日勝負したリンタロウやコウがいるからものすごく気まずい…。

『うーん…』

「ど、どうしたのAさん?」

悩んでいると、後ろから声がした。

『ユ、ユキナリ…。』

どうしようか…
どっちが楽しいんだ…。

「暇なら、俺と話しませんか…?」

一緒にリツちゃん達とおしゃべり…。
でも、勝ちやすいであろう勝負…。

『う、うん話そうか。』

男嫌いなはずなのにユキナリと勝負することをきめた。

男のくせに、可愛くおねだりされたら
気が緩む…((

とりあえず、大部屋から離れて
独房病室に向かう。

めっちゃ気まずい…。
引き返したい気持ちもあったけれど
いつの間にか到着していた。

『それで、話って何?』

「昨日、コウさんと“勝負”してましたよね…?」

おいおい。見られてたのか。
穴作るから、隠れたいよ…。

『お願いだから、誰にも言わないでね!?』

「じゃあ、俺ともその“勝負”したら
いいですよ。」

満面の笑み。

『絶対言わないならやってあげる!!』

一通りルールを説明して、勝負開始。

「俺から、初めてもいいですか?」

『ど、どうぞ…。』

よくわかんないけど、先攻をとられた私は、この選択を後悔することになるとは知らない＿＿

「好きって、言ってください。」

『好き。』

これなら、耐えられる…。

「どのくらい俺のこと好き?」

『何、どのくらいって?』

いきなり豹変するユキナリ。
聞いてない…。

「…Aさんも、まだまだですね。」

『は?どゆこと…?』

いきなり好きの大きさを聞かれても、
初知りの私は答えられず。

「好きは、こうやって表すんだよ。」

ちゅ

『え、ちょ…!!』

唇に、一瞬触れた暖かさ。
不覚にも、照れてしまった…。

「この勝負、俺の勝ちですよね!!」

『はぁ!?キスとか反則だから!!絶対認めない!!』

「Aさん、かわいいから怒らないで?」

『あのね…好きな子にしかキスしたりとか、かわいいとか言っちゃだめ!!』

「え、俺はAさんのこと好きだから大丈夫…ですよ、ね?」

今までのこと忘れよう。
散々、言ってきたけど。

…男のこと、ちょっとだけ好き。

勝者.ユキナリ
見たところ、惚れてしまった模様。