✣ ページ9
「これお水。暫く寝てたから喉つらいでしょ」
「話せるようになったら声、聞かせてほしいなあ」
水が一杯入ったコップを渡され、それに口をつける。ゴクゴクと嚥下する喉元を見てうっとりと笑みを深めた男を尻目に状況を把握していく。
これ多分ヤバいやつだ。
私が可愛くないとか、可愛いとかそんなの関係なくヤバい。よく見れば人工的な光しかない、太陽光が注ぎ込まなくたって窓くらいあるはずでしょ？なんで無いの？
「ふふ、落ち着いた？」
「体の調子はどう？」
「人の火傷とか見るの初めてだからさ」
「それによっては人呼ぶか呼ばないか決めないといけないし」
ぽんぽんと投げかけられる質問に答えることもできずただ呆然と彼の紡ぐ音を聞いて脳で必死に咀嚼しようとする。が、分からない。そもそも火傷って何の話だ？いつ？どこで？の地点に立っている私に彼の言っていることが理解できるわけない。
『え、と』
「！うん、なあに？」
『ど、お兄さんのお名前伺っても』
「俺はきんとき、敬語とか使わなくても大丈夫だよ」
ふわりと優しい笑みを浮かべる彼は変な人には見えなかった。でも状況証拠的に言うのなら彼は私に首輪を付けた変態だ。
思考の海に沈んでいたところを近づいてきた手が引き上げる。親指でゆっくりと擦られた頬はピリピリと痛みと痒みの間を行き来した。思わず眉を顰めるも、彼は依然として柔らかな笑みを絶やさない。夜空を彷彿とさせる青色に甘ったるい熱が灯る。ドクン、と心臓が裏から無理やり圧迫されて、冷汗が背中を伝った。それだけで火傷特有の刺激がして、自分の怪我の範囲さえ理解していない状況に今更緊張感が走る。
怖い
こわい
怖い
「怖い？体震えてる……」
『ここどこ、家、いえに帰して』
「ん〜Aの願いは出来れば聞いて上げたいんだけど、生憎そのお家燃えてなくなっちゃったから」
母親が幼い子にもうあのオモチャ捨てたからないよ、と大事な玩具を捨てたことを事後報告するような無責任な声。
「Aったら全然起きないから危なかったんだよ？」
仕方ないなあ、と頭を撫でられる。頭が急速に冷えていって、仕事は？親は？友達は？と他人のことが思い浮かんだ。
「そういえば、Aの部屋から一人女性の遺体が見つかったんだって」
「鑑定とかそんなのもできないくらいボロボロらしくてさ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポム(プロフ) - シソラスさん» ありがとうございます、そう言って頂けて嬉しいです😭💕これからも頑張りますので是非よろしくお願いします🙏 (2月26日 0時) (
レス) id: 22cb62df43 (このIDを非表示/違反報告)
シソラス - どの作品も独特で不思議な雰囲気が漂っていてとても好きです…是非応援させてください。 (2月22日 15時) (レス) @page7 id: 1420bb5147 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ポム | 作成日時：2024年2月18日 19時
