【募集企画】柞吹学園【小説】

第36話【対応】*夜月禍蘇未視点* ページ36

目の前の彼の手は、最初のうちはなんの以上もなく私をすり抜けていた。


だが次の瞬間。何があったのか、その手が私の肩に触れた。

そのとき私は少し驚いていたらしい。

『な、何と！ 能力解除を能力とする新入生が現れましたー！ 今年の新入生、只者ではないようです！』

そんな放送は私の耳をすり抜けていく。

私は笑った。

周りが静かなことに気付くと、笑うのをやめて目の前の新入生に言った。


「能力解除ですか······良い能力を持ちましたね。あなたの成長を楽しみにしておきます」


能力解除の少年は、目線のせいかわずかに震えながら頷いた。

いつまでも前にたっていられる新入生なんてそうそういない。

前にでてきただけでも誉めるに値する。

私は彼が座っていた席を指差し、彼は静かに席に戻った。



「皆さん。時間を本来より多くいただいてしまいましたが、今度こそ終了です。
　前に出てきてくれた能力解除の人をどうか責めないようにしてくださいね。私のせいなので」



そう言って、二段目のステージから降りた。

生徒会メンバーのもとに戻ってから、役員一人一人に頭を下げた。

彼も大成功かな？······。

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