【募集企画】柞吹学園【小説】 (ページ16)

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第16話【去年の記憶】夜月禍蘇未視点ページ16

8時30分。

今年も入学式が始まった。

去年私は1年生で、歓迎される側だった。
生徒会の頑張りが伝わってくるような入学式だったのをよく覚えている。

入学式だけではない。ありとあらゆる行事において、去年の生徒会は全力だったと思う。
成功させようとするのではなく、楽しく成功させようと、必死だった。

そんな生徒会の人達は、なんというか、とても格好いいと思った。いや、私に格好いいと思わせた。

私もあんな風に活動してみたい。

その一心で、今年は生徒会書記になった。

朝早く？に登校して、入学式の流れを、今年の生徒会メンバーと確認した。
途中色々トラブルがあったが、それも生徒会のおもしろみなのだろうと、気にしないでおいた。

そして今。様々な顔ぶれの1年生が、吹奏楽部の行進曲に合わせて入場してきた。
去年の私はここで、ひどく緊張していたのを覚えている。
「堂々としろ」なんていう私を勇気づけさせるためであろう言葉も、枷にしかならないぐらい。

入場している1年生のなかで、緊張している人を見つける度に、去年のことがだんだんと昨日のことのように鮮明に脳裏に浮かぶ。

私は隅っこでちょこんと座って拍手をしているだけなのに、楽しい気持ちでいっぱいだ。

1年生が椅子に座ると、生徒会長の話である。

正直ここは楽しくないのが目に見えている。
どこに行っても、生徒会長の話というのはつまらないものだ。

今年度柞吹学園入学式のメインイベントとも言うべきクイズ大会は10時から。

まだ時間に余裕がある。

メインイベントまで私の出る幕はないし、せっかくなので去年の私のように、学園内を物色することにした。

入学式でほとんどの生徒が第１体育館に集まっているから、他の場所はがらがらである。

私は体育館を後にした。