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運命論者の悲み ページ9

或る倉庫では、銃声が鳴り響いていた。



黒蜥蜴百人長、広津柳浪が動いたのである。



雨のように裏切者に降りかかる弾丸を背に、広津は煙草を取り出し、火をつける。




「こんにちはー、広津さん」




その直前に、未だ若い声が聞こえた。見れば、黒髪を左耳下で一つに結わえ、其の美しく端整な顔を半分隠すようにして巻かれた包帯が目立つ少女がいた。




「如何したのかね、室生くん。君はこういう生臭い所は嫌いでは?」

「あは、呼び出しておいて非道いですね」




室生犀星は嘘くさい笑みを浮かべると、手に持っていたソレ(、、)を広津へ投げ渡す。




「何時も済まないね」

「いえいえ、他ならぬお爺さんの御頼みは断れませんからねー」



そして、今度はソレがギッシリと詰まったスーツケースを渡す。



「取り敢えず、此処一つは爆破出来る程度の爆弾です。お納め下さいね」




スーツケースの中には高性能爆弾が詰まっていた。



「爆弾と催眠は私の管轄です」

「そうか。以後も宜しく頼もう」

「どうぞ良しなに。処で御煙草は吸わないんですか?受動喫煙とか気にしなくていいですから」
「一々そんな事を気にするのは君位だと思うが」




などと云いながらも今度こそ煙草に火をつける。其の様子をボンヤリと光のない目で見つめながら、室生は彼の言葉を問いかけた。




「仕事終わりの一本は如何ですか?」




広津は息を一つ吐くと、口を引きつらせ答えた。



「格別だ」

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作者名:灘 むしとりあみ+ x他1人 | 作成日時:2016年7月6日 5時

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