運命論者の悲み α3 ページ11
「ほら、珈琲」
「・・・何中也、嫌がらせ?ボク苦い物無理なんだけど?」
「手前用に充分甘くした。飲めるだろ」
「それは、まあ、有難いけどさあ・・・」
未だ時刻は昼を少し過ぎた頃だ。
明るい喫茶店内で、マフィアの若幹部2人は出張の主な仕事内容についての資料を捲っていた。
城は中原が注文してきた珈琲を1口飲んで、うげェと顔を顰めた。
「苦い」
「苦くねぇよ」
「ボクにとったら苦い!」
「俺にとったらそんなん甘すぎて飲めねぇな」
「へっ、ボク
「どんな意地の張り方だよ・・・ったく、砂糖も
「ボク珈琲を受け付けないタイプの体だから」
「ンな事より先ず資料に目を通せ」
中原の冷たい言葉に、漸く城は自分の分を手に取った。
中ほど迄進んだ頃、城のその人形じみた整った眉が寄せられた。明らかな、不機嫌の色が顔に滲む。
「・・・中也」
「なンだよ」
「今回の任務って、処分したら駄目なんだっけ?」
「場合によるだろ。無差別はアウトだ」
「ふぅん・・・」
詰まらなさそうに資料を閉じる城。
それを受けて、もう資料は読んだのか、という問いはしかし呑み込む。
城のことだ、どうせやらなければならないことは存外きちんとするのだ。
気にする方が莫迦らしくなってくるのである。
それでも、しかし。
これだけはいつも言ってしまう。
「・・・ゲームすんな」
「だって読んだ」
「それは知ってる」
「じゃあ何で?」
「仕事中だろうが!」
これが現双黒の、いつも通りなのである。
「なーお」
黒猫が鳴く。
『ワタシを使わないのか?』
「・・・それは、自分の手で仇を討ちたいという意味?」
喋っているのは真っ白な、いや真っ黒な青年、それとも少女?
解らない、判らない。
そこに居るのは誰なのか。
薄暗い路地裏に、確かに存在はしている。
でも誰だ?
誰なのだ?
『そうとも云うな』
「君は本当にボクが大好きだね」
『ああ、霧雨が大好きだ』
「其れはボクだろう?」
『いいや、ワタシは霧雨が好きなのさ』
「ボクを愛してはくれないの?」
『キミを愛して死にたくないからね』
「それもそうか」
『なあ。ワタシを使って呉れないのか?』
なーお。
ちりん。
黒猫の首の鈴が鳴る。
「考えておくよ」
なーお。
ちりんちりん。
灘です。
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作者名:灘 むしとりあみ+ x他1人 | 作成日時:2016年7月6日 5時