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翌日 、 旗印戦は開幕される 。
「 葡萄の収穫一番の県 、 分かるか ? 」
「 ありがとうございます …… 我が故郷 、 山形 」
社会の授業は中学校で学んだ内容の復習である 。
不良校にしては珍しく学生らしい時間が流れ 、 質問に挙手した伊達はそのまま隣に座る桜子の手を握った 。
あまりにも自然な流れに誰も止められず 、 授業中にも関わらず甘い雰囲気が漂う 。
「 桜子 …… 私と一緒に葡萄を 、 」
「 馬鹿ってぇ 、 葡萄は山梨に決まってるら 。 阿呆け ?
本郷はお
「 武田ぁ 、 お
「 何を言っとる 、 馬鹿ってぇ … おまんぶっさらうぞ 」
至近距離で睨みつけ合う武田と伊達に巻き込まれる形で萎縮する桜子をふたりから引き離したのは上杉だ 。
困り笑いをした桜子は上杉に肩を抱かれている 。
「 まあまあ落ち着いてふたり共 。 桜子ちゃん巻き込むのは違うだろ ? それじゃあ嫌われてしまう 、 それに 」
「 上杉 …… ! ! 」
「 どちらの葡萄も甘くて美味しいですよ 、 あはっ 」
「 「 黙れ上杉 ! ! ! 」 」
そう言われてやれやれと肩を竦めた上杉を慰めるように桜子が口をぱくぱくとさせてお礼を伝えた 。
何を思ったのか上杉は彼女の髪を掬って唇で触れた 。
「 っ 、 うえ 、 すぎさっ … 」
「 しぃ 、 君と僕の秘密 」
睨み合う武田と伊達の影になっているふたりの姿は誰にも見えていない 。
男性からのスキンシップに弱い桜子の顔は真っ赤だ 。
「 知らんのか ? 葡萄の花言葉を …… ぁ 」
「 ? なんだ黒田 」
「 いや花言葉は "思いやり" だ 。 郷土愛とは大いに結構だがいがみ合いなど葡萄は望んでおらぬ …… 」
「 … そんなに見つめてどうしたんだい 」
花言葉を用いて喧嘩を宥めた黒田はやけに考え込ながら桜子を見つめた 。 不審に思った上杉が問うと 、
「 まさか 、 な 」
「 黒田 ? 」
「 何でもないさ 、 そうだ ……… 頬を染めた本郷はなかなかに可愛らしかったな 」
「 は ? おい黒田 …… ! ! 」
「 なぜお前等まで喧嘩し出す ! ? 」
真剣な表情から満足気な笑みを浮かべた黒田に対し 、 上杉は胸倉を掴みあげる 。
授業を中断された社会教師の言い分は尤もである 。
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あめ??(プロフ) - 続きが見たいです!是非続編でもいいので、作っていただけると嬉しいです! (5月7日 23時) (レス) @page27 id: 3d269f0d91 (このIDを非表示/違反報告)
静波紅音 - これで終わりなんて寂しすぎます!!!続きが見たいです!! (9月25日 9時) (レス) @page27 id: 664202b07f (このIDを非表示/違反報告)
SugaR?(プロフ) - とっても面白いはなしで大好きです!頑張ってください楽しみにしてます!! (2022年10月2日 17時) (レス) @page11 id: 0fe5d9de4b (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2022年9月26日 21時) (レス) @page3 id: b848bb5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十日夜香耶 | 作成日時:2022年9月25日 0時