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下唇をぎゅっと引き結んだ桜子は理事長への怒りに双眸を揺るがしている 。
廊下の突き当たりを曲がった時 、 彼女は衝突した 。
「 っ 、 たぁ …… ぁ 、 」
「 貴様は …… 何を急いでいる 」
「 … すみません 、 失礼致します 」
思わず痛みに額を抑えた桜子は恐る恐る見上げる 。
スルメを食す彼 、 織田信長はあからさまに逃げようとした彼女の腕を掴んだ 。
「 っ ! 離して 、 」
「 強く握りすぎだ … 自分を傷つけるな 」
怒りに震える桜子の手は拳を強く握ったことで真っ白になっていた 。 冷静さを欠いていたと脱力した彼女の頬に手を添えた信長は不敵に笑った 。
「 湖は好きか ? 」
「 え ? 好きか嫌いかといえば … 好きですが 、 」
「 ならば行くぞ 」
困惑する桜子の手を引き 、 信長は教室へ駆けていく 。 持参していた七輪と彼女の鞄を抱えた信長は驚愕の表情を浮かべた周囲に目もくれず 、数学教師に迫る 。
「
「 …… は ? 」
「 織田さん …… ? 」
「 ふっ 、 貴様はそれで良い … 着いてこい 」
呆気に取られた数学教師を他所に 、 またひとつ不敵な笑みを浮かべた信長は扉の方に進んでいく 。
未だに困惑する桜子の空いた右手を握ったのは 、
「 桜子ちゃん 、 」
「 ! 上杉さん …… 」
心配そうに眉を下げた上杉だった 。
握られた桜子の右手はじんわりと熱を帯びている 。
「 ……無理しないで 、 ゆっくり休んで 」
「 はいっ 」
花が綻ぶような笑みを浮かべた桜子はゆるりと上杉の手を解いて教室を出て行った 。
沈黙が教室を支配する 。
上杉は 、 彼等はやはり桜子という少女に心底惹かれてしまっているのだった 。
一方で桜子が意気揚々とした信長に連れてこられたのは岩場の多い湖だった 。
「 っ 、 織田さん 、 ここは …… ? 」
「 見てわからんか ? 湖だ 」
「 いえ湖は知っていますが … なぜ 」
不思議そうに湖を眺めた桜子は問いかけるが 、 岩に腰をかけた信長は何を言うわけでもなく 、 隣をぽんぽんと叩いて座るように促した 。
当惑しながらも隣に座った桜子は信長に肩を抱かれて頭を撫でられた 。
突然のことに彼女は瞠目したが 、 心地良さに抗うことは出来ずに流されるままに瞳を閉じた 。
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静波紅音 - これで終わりなんて寂しすぎます!!!続きが見たいです!! (9月25日 9時) (レス) @page27 id: 664202b07f (このIDを非表示/違反報告)
SugaR?(プロフ) - とっても面白いはなしで大好きです!頑張ってください楽しみにしてます!! (2022年10月2日 17時) (レス) @page11 id: 0fe5d9de4b (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2022年9月26日 21時) (レス) @page3 id: b848bb5ef6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十日夜香耶 | 作成日時:2022年9月25日 0時