三話 ページ4
竜也と私は昨晩から事務所に泊まり込んでいた。
いつものようにタバコを自分で巻いている竜也。
私「イクオから事件の詳細の連絡が来た」
段「そうか」
私「それから、ガサ入れの情報も。深町さんには連絡しておいた」
段「はっ、手が速いな。助かる」
竜也は眼鏡を押し上げ、チラリと笑顔を覗かせる。
そんな彼に、私は高鳴る胸の音を隠すように笑いかける。
私「どういたしまして」
竜也は包んでいたタバコに火をつける。
_トントン
深「失礼します」
3人の男が慌ただしく部屋へ入って来た。
3人は竜也の部下である。
深「竜也さん、この間俺に、財閥の隠し子で子供の頃地下にある賭博場で金を稼ぐ英才教育を受けたって仰ってましたよね?」
男「いや、俺はアメリカのなんとかってスパイ組織に育てられたって聞きましたけど」
男「いや、俺は旅芸人で全国回ってた苦労人だって」
それぞれ食い違っている話に首を傾げ合う。
段「隠し子でも、スパイでも、旅芸人でもねぇよ。バカかおめぇら。」
竜也の言葉に男達はうろたえ、私は苦笑いを浮かべた。
段「適当な嘘ついたに決まってんだろ。息を吐くのと同じペースで嘘をつくってのが今週の俺のポリシーだ」
からかわないでくださいよ....と男達は口々につぶやき、肩を落とした。
深「俺達は、若頭"段野竜也"に命預けてる身なんすから」
段「そうか....。でも俺、本当は段野って名前じゃねぇけどな」
男「っえ、まじっすか...!?」
段「嘘だけど」
男「からかわないで下さいよ〜....」
段「あぁ、お前らが横でごちゃごちゃうるせぇから二億損しちまったじゃねぇか」
無表情のままとんでもない発言をするもんだから、男どもはあたふたとした。
男「「二億っ....!?」」
段「嘘だけど」
竜也の返答にホッと一息ついたがそれも束の間だった。
段「代わりに三億儲けたけど」
男「「....、三億っ!?」」
私「あんまり、からかわないであげて下さい。若頭」
深「Aさん....」
何故か深町さんからうっとりとした目で見つめられた。
思わず苦笑いを返す。
段「チッ、話済んだならとっとと出て行け」
あからさまに不機嫌そうな様子の竜也。
部下の2人の男は慌てた様子で部屋を後にする。
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作者名:翠晶 | 作成日時:2022年1月5日 0時