ウロボロス (ページ29)

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二十八話ページ29

イクオと会う為、銭湯に来ていた。

湯船に浸かり、今回の事件について話した。

段「葵はなぁ、俺が育ててきた大切な商品だ。今年2年目で
借金も完済したってのに」

突然、隣の湯船から身を乗り出してきたイクオ。

龍「ちょっ、ちょちょ！えっ、2年？」

段「何だよ」

龍「だって、彼女入りたての新人だって言ってたから」

思わず笑ってしまった。

段「あいつ見た目がガキっぽいからなぁ、取り敢えず新規の客にはそう言っとけば食いつきがいいんだろう。誰だってそんくらいの裏の顔は持ってる。2年前、葵は俺に"復讐する”って言ってた..」

龍「復讐....」

段「あぁ、でもこの前会った時はもう良いってさ。昔の話だからって。葵は別の幸せを見つけてた....。俺らとは違うってことだ....」

葵からその話を聞いた時、俺の頭にはAの事が浮かんでいた....。

葵と同じよう幸せな道を歩ませられるんじゃないかと....。

風呂から上がり体を拭く。

段「高くつくよなぁ....。銭湯来るたび貸切ってよ」

背中のタトゥーのお陰で人と一緒になんて入れない。

龍「電話で言ってた、情報屋のこと」

段「そっちはそっちで動いてる。あー、これ見てみろ」

ロッカーから例の物を取り出してイクオへ投げつけた。

龍「っ！？うわっ！ちょっとー！！」

段「義手だよ、義手」

龍「義手....？偽物？」

Aと同じような反応をするイクオに頬が緩ん
だ。

段「御子柴はその中にメモを隠してた。劉宗鉉ていう中国人の名前だ。Aに調べさせたら闇医者だった。今日会ってくる」

龍「それってAも一緒？大丈夫....？」

段「さぁな。少し調べただけで御子柴はやられたんだ。つまり、金時計は今もしっかり網張ってるって事だろ。それに、あいつも言い出すと聞き分けねぇからな...」

龍「そっか...。その人、僕たちの目的に巻き込んじゃったって事だよね。たっちゃんさ、結子先生に叩かれた事覚えてる？あの時、結子先生に言われた事だけど」

段「とっくのとうに外れちまっただろ。人の道からは。それでも、俺は辞めねぇよ。復讐なんかしても意味がねぇ、死んだ奴はそんな事望んでねぇ。きっとそれが正しいんだろうな。でも俺は間違ってて良い。別の幸せなんて必要ねぇんだ、仇取れんならな。先に奪ったのは金時計の方だ。魚心あれば水心っつんなら、その逆もあんだろ」

龍「そのことわざ....、最近聞いたことあったから」

俺達の間には重たい空気が流れた。