二十五話 ページ26
今朝、俺はたっちゃんに頼まれてAの部屋を訪れた。
朝早かったので、俺は静かに合鍵を使って部屋へ入った。
龍「おじゃましまぁす....」
案の定、ベットですやすやと眠るAの姿があった。
忍び足で彼女のそばへ寄り寝顔を覗き込んだ。
久しぶりに見た彼女の寝顔は、幼い頃とそっくりでクスリと笑ってしまった。
私「んっ....、イクオ?」
龍「おはよ、起こしちゃったね。まだ寝てていいよ」
彼女を安心させるように頭を優しくなでた。
猫の様にすり寄ってくるAを、”可愛い”と思ってしまった。
私「仕事忙しいのにごめんね....」
龍「何言ってるの!気にしないで!それより怪我の調子どう?」
私「まだちょっと痛むかな」
無理して笑ってるのが見え見えだ。
龍「撃たれたくせに、ちょっとで済むわけないだろ全く...」
僕の口からは思わずため息が出た。
私「ごめんなさい...、心配かけて」
シュン....と、効果音がつきそうなほど分かりやすく落ち込んでいる彼女に思わず笑みが溢れた。
龍「Aに何かあったのかもって、僕もたっちゃんも大慌てだったんだからね!気をつけてね!」
私「はーい...」
そんな緩い返事を合図に、僕は立ち上がった。
龍「さぁて!適当にご飯作っておくね。Aは寝てていいから」
私「本当に、何から何までありがとうね」
龍「どういたしましてー!味の文句は受け付けませんからねー」
私「はぁい....」
Aが布団にちゃんと横になってるのを確認し、キッチンで料理を始めた。
簡単な物しか作れないが、彼女の好きなオムライスだけは作れるよう練習したのだ。
私「石森から何聞き出せたの?」
龍「あー、残念ながらこれと言ったことは.....」
たっちゃんから口止めされていたから言えない....。
私「私に嘘つけると思ってる?」
寝ていたはずの彼女がチラリと顔を出した。
その圧に敵うわけなく全て話した。
オムライスを作り終えた頃に日比野さんから着信が入った。
龍「はい。・・・・、分かったすぐ行く」
事件の目撃証言が出たとの知らせだった。
しぶしぶ仕事へ向かうことにした。
龍「大人しく寝てるんだよ。しっかり食べて、寝て、早く治してね」
私「うん、仕事いってらっしゃい」
龍「うん」
後ろ髪を引かれながらも部屋を出た。
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作者名:翠晶 | 作成日時:2022年1月5日 0時