十九話 ページ20
深く、洗い口づけに、Aの息は段々と上がって行く。
段「っはぁ....、お前は馬鹿か。なんでもっと早く知らせない.....」
唇を離すと、Aの悲痛に満ちた顔が伺えた。
私「心配かけてごめんなさい....、気を失ってたみたいで....」
段「傷見せてみろ」
涙ながらに謝る彼女の姿に胸が締め付けられる。
俺はそっと、Aの腹部の服を捲り上げる。
私「っ....」
痛みからか、少し肩を跳ね上がらせるA。
段「っ....、これはかすったっていわねぇよ。アホが。思いっきし撃たれてるじゃねえかよ」
腹部には痛々しくも、弾が撃ち込まれた跡が残っていた。
私「へへっ...、避け損ねちゃった」
段「はぁ....。撃ってきたのは石森か？」
静かに頷くA。
その返事を確認し、その場ですぐにイクオへ電話をかける。
段「石森を適当な理由がつけて呼び出せ。ただじゃおかねぇ....」
自分でも分かるぐらいに殺気を放った声でイクオへ指示を出した。
龍「わかった。Aは？」
段「撃たれて怪我はしてるが、一応無事だ」
ちらりと隣に座るAへ視線を向ける。
龍「撃たれたっ！？石森さんに！？」
段「あぁ」
龍「許せない.....、わかった。場所と時間はまた連絡する」
段「頼んだ」
電話が終わった俺にAはぽつりと話しかけた。
私「沢渡くん、助けられなかった.....っ」
段「....、お前のせいじゃねぇよ」
私「情報持ってる時点で、狙われる事は想定するべきだった....っ」
段「一旦家帰るぞ」
お前のせいじゃねぇ.....。
心の中でそう繰り返した。
家に着く頃には泣き疲れて眠っていた。
そんな彼女を抱え、部屋まで連れて行く。
家具などはほとんど置かれて無く、殺風景な部屋である。
Aをベットへそっと寝かせ、手を握った。
少しでも、安心させてやりたかったが、俺の方が安心させられてしまいウトウトと眠りに入ってしまった。
目を覚ましたのは夕方過ぎだった。
イクオからの着信で目を覚ます。
石森と会う時間と場所の連絡だった。
ふとAの方へ視線をやると、痛みからなのか表情が苦しそうだった。
私「たす...け......て....」
そう苦しげに呟いた彼女に、俺の胸がキュッと締め付けられた。
段「俺が守ってやる....」
俺は決意と共に、彼女の額へキスを落とした。
少し表情が和らいだ彼女を部屋へ残し、俺は約束の場所へ向かった。
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作者名：翠晶 | 作成日時：2022年1月5日 0時
