十七話 ページ18
僕と日比野さんは目を覚ましたゆきなちゃんのお見舞いに来ていた。
どうやら病室にAが来ていたらしい。
彼女の匂いが微かにだが残っていた。
僕が1人病室を出ると携帯が鳴った。
慌てて通話できる場所へ移動し、電話に出ると沢渡が慌てた様子で話し始めた。
公衆電話からかけてきていたが、途中で切れてしまう。
そして、電話の最後の方に微かにだが女の声がした。
しかも、聞き慣れた声だ。
龍「あ、たっちゃん。今Aといる？」
聞き間違いだといいが.....。
そう願いつつたっちゃんは連絡を取る。
段「あぁ？いや。あいつにはちょっと頼み事してたんだが....、帰ってこないし連絡もつかなくて部下に探させてる所だ。何かあったのか？」
龍「今、沢渡から連絡があって、西田さんの殺されたあの現場にはもう1人居たらしいんだ」
段「あぁ、あいつもその沢渡って奴から同じ情報仕入れてたぞ。そのもう1人ってのが...」
龍「っ、Aと沢渡って知り合いだったの！？あっ、たっちゃんごめん。電話だ。また掛け直す」
やはりAに何かあったのかのではと....、思わず勘繰らずにはいられなかった。
龍「はい。えっ.....！？現場は！？」
報告に慌てて病院を日比野さんと共に飛び出した。
向かった先は、沢渡の殺害現場だ。
沢渡は、四谷北署の石森さんのせいで麻薬の密売や、殺人を犯したかの様な扱いを受けていた。
新宿署でも目撃者として追っていた。
その彼が殺された。
そして現場にはAもいた可能性が高い。
それがどういう事なのか、いとも簡単に想像ができた。
現場に着くと、首を吊って死んでいた沢渡の死体。
そしてレシートの裏に書き残された遺書。
龍「っ、くそっ！！！」
現場には叫び声だけが虚しく響き渡った。
刑「この近くで銃声が聞こえたって通報があったらしいぞ。しかも血痕も残ってたらしい」
龍「っ！？あの、それってどこですか」
俺はその情報に思わず飛びついた。
刑「えっ、あぁ...、ここから2ブロック先の路地裏です」
直感したのだ。
その現場はAが襲われた場所であると。
僕はその場所へ無我夢中で走った。
Aは俺たちで守る。
そう誓ったたっちゃんの為にも！
龍「たっちゃん！！撃たれたかもしれないっ！！」
走りながら、電話をかけ最悪の事態になりかねない事を伝えた。
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作者名：翠晶 | 作成日時：2022年1月5日 0時
