十二話 ページ13
そこには連絡をしようとしてた彼が立っていた。
竜也はいつにも増して不機嫌そうな面持ちで、私の手に握られていたコーヒーを奪い取り自分の身体へ流し込んだ。
段「ぬるい....」
そう呟き、キッと鋭い視線を沢渡くんへと突き刺す。
私「あ、ごめん。買い直してくるよ」
段「いい。戻るぞ」
慌ててコーヒーを買いに行こうとする私の腕を掴み自分の方へと引き寄せた。
彼の胸へとすっぽりとハマってしまった私の胸は不意にときめいた。
段「ガキは帰んな」
沢「っ!?は、はい!」
青ざめた表情を慌てて立ち去る沢渡くん。
私「あーぁ、せっかくいい情報持ってきてくれたのに」
段「はっ、知るか」
鼻で笑われてしまったが、今度何かお礼してあげなきゃなと頭の隅で考えていると、竜也の携帯から音が流れた。
段「....、サツが来る」
私「滝川の件かしら....」
段「さぁな。戻るぞ」
私達は焦る様子も無く事務所へと戻った。
深「おかえりなさい。もういらしてます」
事務所へ戻ると深町さんがいつものように待っていた。
段「お前らはここで待ってろ」
そういい、弁護士だけを連れて部屋へと入っていった。
深「お戻りが遅かったので、竜也さんが心配されてましたよ」
私「ちょっと情報収集をね」
深「そうでしたか。愛されてますね、竜也さんに」
深町さんからの思わぬ発言に、私は彼を見つめたまま固まってしまった。
私「.....急に変なこと言わないで下さいよ」
下手くそな笑顔で誤魔化してみる。
深「近くで見てるので分かります。竜也さんはAさんの事大切にされてます」
竜也が....?
そんな私を......?
そんな、僅かな期待に胸が膨らむのを感じた。
だが、やはり結子先生の事が頭をよぎる。
私「だったらいいのにね....」
私にはこの言葉でしか返事が出来なかった。
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作者名:翠晶 | 作成日時:2022年1月5日 0時